18年かけ「高温超電導」の実用化にメド
2005年から「高温超電導磁石」による3両編成のリニア車両の走行試験を山梨実験線でスタートした。
「高温」と言っても、「冷温超電導磁石」と比較してのことで、実際には、マイナス269度より14度高いマイナス255度で冷却する超電導磁石を「高温超電導磁石」と呼んでいる。
「高温超電導磁石」の材料は、希少金属を使わないビスマス(Bi)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、銅(Cu)からなる酸化物である。
物質・材料研究機構の前田弘氏(故人)らが1988年に開発したセラミック系超電導磁石である。
ただセラミック系の酸化物ゆえ曲げようとすると簡単に折れるなどの弱点があり、その改良などを重ねてきた。
国のリニア技術評価委員会は2017年3月、「低温超電導磁石」によるリニア営業線の開発は完了したと認めた。
それに続いて、昨年3月には「高温超電導磁石」でもリニア営業は一定レベルの技術的な成立性の見通しが得られたことを認めた。
2005年の試験運転スタートから18年も掛かって、ようやく「実用化にメドがついた」のである。これが超電導の世界のビッグニュースなのだ。
希少な液体ヘリウムが不要
国の委員会は、今後3年間、引き続き走り込みを実施して、運用安定性の検証を行うよう要請した。
新しい超電導技術の「高温電導磁石」だから、安全性を最優先に、経年劣化や何らかの衝撃で断線しないかなど営業運転に向けたさらなる検証が必要である。
今後、営業線での実用化に向けて技術性をさらに磨き上げる。
「高温超電導磁石」のメリットは冷媒の液体ヘリウムが不要なことだ。
非常に高価で、ランニングコストの高い液体ヘリウムが不要となれば、コスト面だけでなく、コイルは冷凍機が直接冷却する構造となっているので、配管などを大幅に省略できる。つまり、従来よりもはるかに簡単で便利になるのだ。
その上、冷却に要する消費電力の低減等が図られる(図表2)。