パリ、マルタで電動キックボードが「全面禁止」に

「未来のモビリティ」として注目された電動キックボードをめぐって、先行導入してきた世界の各都市で「禁止令」が相次いでいる。

2023年4月1日、フランス・パリでシェアサービスの電動キックボードに乗る人々。4月2日、市内で使用されている電動キックボードを禁止するかを問う住民投票が行われ、投じられた9割が反対票だった
写真=EPA/時事通信フォト
2023年4月1日、フランス・パリでシェアサービスの電動キックボードに乗る人々。4月2日、市内で使用されている電動キックボードを禁止するかを問う住民投票が行われ、投じられた9割が反対票だった

かつて電動キックボードの「パイオニア」として導入を推進したパリでは、危険だとして批判が殺到。住民投票で9割が反対に回り、レンタル事業の全面禁止に至った。地中海の島国・マルタもこれに続き、来春から全面禁止となる。

日本では「アプリで予約し、街角でレンタルできる」という手軽さから、海外に遅れて普及しつつある。本当に「未来のモビリティ」にふさわしいのだろうか。

小さな段差が大きな事故につながる

イギリスでは、電動キックボードがバスと衝突。25歳女性が靱帯じんたいを断裂し、脚が「茹でたスパゲティ」のように曲がるという危険な事故が起きた。英「ヤフー!ライフ」が今年11月、その子細を報じている。

事故が起きたのは2021年8月23日、東イングランドのエルストリーの町だ。電動キックボードに乗ったラザルスさんが走行中のバスを抜かそうとしたところ、バスと歩道の段差との間に挟まれる形で転倒。衝撃で彼女は宙に投げ出され、重傷を負った。地面に叩きつけられ、通行人がやっとのことで歩道に引き上げた。

ラザルスさんは両膝の十字靱帯を完全に断裂。複数回の手術と大がかりな理学療法を受けることになった。ラザルスさんは当時の状況を、「道路の坂を下っていて、あまり集中していませんでした」と顧みる。

現場に到着した救急隊員は、救急車まで歩けるかどうかラザルスさんに尋ねた。だが、彼女が歩こうとすると、左足は思わぬ方向に曲がり、右足も別の方向にぐにゃりとねじ曲がった。まるで「茹でたスパゲッティ」のようだった、と彼女はいう。

事故後、ラザルスさんはパニック発作に悩まされたほか、歩くのも難しく、職を失った。「25歳にもなって歩き方を習得し直すなんて思いませんでした」と語る。幸いにも彼女はその後目覚ましい回復を遂げ、現在ではマラソンや登山にも挑戦するアクティブな日々を送っている。