飲酒、放置、負傷者急増…

電動キックボードの急速な普及につれ、歩行者や乗り手に生じるリスクが無視できなくなってきた。世界中の多くの都市が、歩道の乱雑さや事故など、電動キックボードがもたらす負の影響に手を焼いている。

電動キックボードの利便性や利用の楽しさよりも、もはや危険性が目立つ。米CNNは、アメリカでは主要な観光地などで必ずといっていいほど目にするようになったと述べる。その陰で歩行者たちは、歩道を疾走する電動キックボードをかわし、道端に乗り捨てられたレンタルの電動キックボードをよけて進むなど、肩身の狭い思いを強いられているという。

ブルームバーグは、歩道での危険な運転に加え、時には飲酒運転が大きな問題となっていると指摘する。米消費者製品安全委員会は、2017年から2021年にかけて電動キックボードや電動スケートボードなど「マイクロモビリティ(超小型移動手段)」による負傷件数が127%増加したとのデータをまとめた。

従来利用されている自転車と比較して、電動キックボードの危険性は明らかだ。モーターを動力として人力以上のスピードを出すことができる反面、小さな車輪だけでバランスを取る構造上、どうしても安定的な走行が難しい。小型ゆえに、電動車両を運転している自覚に乏しい問題もある。

電動キックボードで2人乗りをする若者
電動キックボードで2人乗りをする若者(写真=Kristoffer Trolle/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

若者が集う大学キャンパスでは、構内でのマイクロモビリティの使用禁止に動く例が相次ぐ。名門・米カルポリ(カリフォルニア州立ポリテクニック大学)のサン・ルイス・オビスポ校では、過去10年間にわたりマイクロモビリティの使用を禁止しているが、それでも痛ましい事故が起きた。

地元メディアのカルマターズによると2020年、同大学の1年生がキャンパス付近を走行中、乗っていた電動スケートボードから転落して死亡している。こちらはスケートボードだが、マイクロモビリティの危険性を物語る事例だ。

電動キックボード先進都市・パリが、禁止に舵を切る

規制への圧力が各地で高まるなか、ついにパリが動いた。歩行者に優しい都市として知られるパリは2018年、電動キックボードのレンタル事業を世界の大都市として初めて正式に許可し、歓迎姿勢を打ち出していた。かつて導入のパイオニアとして賞賛されたそのパリが一転、今や禁止に舵を切っている。

米フォーブス誌が詳しく報じているように、パリでは市の公式な認可のもと、Dott、Lime、Tierの3社が、計1万5000台という大量のレンタル電動キックボードを街頭に配備していた。だが、ニューヨーク・タイムズ紙が報じたパリ警察本部の発表によると、昨年の電動キックボードによる死亡事故は3件、負傷事故は459件にのぼる。