大学教授はラクな仕事ではない。関西の私立大学教授の多井学さんは、学生の母親から「内定をいただけたのですが、卒業には単位が足りない。なんとかならないでしょうか」と懇願されたことがある。多井さんはそのとき、どう対応したのか。『大学教授こそこそ日記』(三五館シンシャ)より一部を紹介する――。(第2回)
※本稿は、多井学『大学教授こそこそ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。
大学によって授業負担は大きく異なる
大学教授といえば、講壇に立ち学生相手に講義をするのが仕事と思っている方もいるだろう。しかし、国立の大学(院)によっては、授業負担がほとんどない教授もいる。
東京大の東洋文化研究所などの各種研究所では、専任教員は大学院を通年で0.5コマのみの担当だという。通年0.5コマというのは、春学期(前期)に90分(もしくは100分)の授業を週1コマだけ行なえば、秋学期(後期)には授業を持たなくていいということだ。
さらに国際日本文化研究センター(日文研)などの国立研究所の専任教員は、授業担当コマ数が実質ゼロ。研究とシンポジウム・講演会などを実施しているだけでOKだそうだ。なかなかうらやましい。
私の大学院時代の先輩は北海道大から京都大の教授に転身した。彼と飲んでいると、「北大から京大に移って、ランクが上がった(*1)のはいいけど、授業ノルマが増えちゃって困っているよ。北大のころは通年2.5コマだったのが、京大だと3.5コマも教えることになっちゃって、キツくてキツくて」と愚痴った。KG大で当時通年8コマを担当していた私は、思わず殺意を覚えたのだった。
(*1)ランクがあがった 戦前に大日本帝国が創設した北大、東北大、東大、名大、京大、阪大、九大を「旧帝大」と称する。この中では東大と京大が「東西両横綱」で別格。ただ、歯学のように東大も京大もその分野を持っていないと、東京医科歯科大か大阪大がベストとなる。政治学の分野では、北大から東大や京大に移籍すると完全にランクアップ。研究費がとりやすくなったり、政府の審議会委員に呼ばれたりする場合も。