ブタを悪口に使うのは間違っている

③ブタ

「ブタ」と言われて、うれしい人はいないだろう。「ブタ」は専ら悪口に使われる。

ブタは汚い! ブタは太っている! 「このブタ野郎」などと言われれば、これ以上ない屈辱だ。それどころか、「ブタ!」というだけで、これは立派な悪口である。

ブタは本当にブタ野郎だ。神さまはどうして、こんな見下される生き物をお創りになったのだろう。

ブタは太っている? そんなのはウソである。ブタの体脂肪率は一五パーセントである。これはやせた男性くらいの体脂肪率だ。人間の場合は、男性よりも女性の方が体脂肪率は高い。ブタの体脂肪率は、細身の女性モデルよりは、ずっと低い体脂肪率である。この数字は、イヌやネコと比べても低い。

ブタの体は、思っているよりもずっと筋肉質である。ブタは時速四〇キロメートルで走ることができると言われている。これは一〇〇メートルを九秒で走る速さである。人間の一〇〇メートルの世界記録を上回る速さだ。

ブタが太っているというのは、とんでもない話だったのである。「ブタ野郎」という言葉は、本当は「ブタみたいに痩せている」という意味が正しいのだろう。

ブタ
ブタ(写真=Pkuczynski/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

「ブタ野郎」は褒め言葉でしかない

また、ブタはきれい好きな動物として知られている。

特に、用を足す場所と、エサ場と、寝床をいっしょにすることがない。そして、トイレの場所を決めるとトイレ以外で用を足すことはない。エサ場や寝床を汚さないためである。もし、養豚場が汚れて汚い場所になっていたとしたら、それはブタのせいではなく、人間のせいなのだ。

稲垣栄洋『ナマケモノは、なぜ怠けるのか? 生き物の個性と進化のふしぎ』(ちくまプリマー新書)
稲垣栄洋『ナマケモノは、なぜ怠けるのか? 生き物の個性と進化のふしぎ』(ちくまプリマー新書)

それだけではない。ブタはとても、頭が良い動物であると言われている。研究者によれば、ブタは脳が発達しており、人間の三歳児レベルの知能があることが明らかにされている。その知能は、イヌやイルカよりも高く、チンパンジーと同程度であるというからすごい。

何とすばらしい生き物だろう。太っているように見えるブタは富のシンボルとされていて、実は世界中で幸運を運ぶ動物とされている。

思い出してほしい。そういえばブタは貯金箱のデザインに用いられ、富をたくわえているのだ。

もう「ブタ野郎」は褒め言葉でしかない。

だからね、悪口を言われるブタも、そのままでいいんだよ。

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