秋の登山ではどんなことに気をつけるべきなのか。ノンフィクションライターの羽根田治さんは「日帰りができるような低山でも、毎年遭難や死亡事故が起きている。とくに秋はクマとスズメバチの活動が活発化するので、注意が必要だ」という――。
林の中をハイキングする人
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標高が低い山へのハイキングでも命を落とす可能性

史上最高といわれた猛暑が9月になってもおさまらず、例年になく秋の訪れが遅く感じられた今年だが、10月に入りようやく暑さが一段落した感がある。爽やかに澄んだ秋空のもとで標高の低い山を歩くには、これからがベストシーズンとなる。紅葉や秋の味覚、温泉などをプランに組み入れれば、より充実したハイキングが楽しめるだろう。

ただし、低い山だからといって、決して油断はできない。標高の高低に関係なく、どんな山にもなにかしらのリスクが必ず潜んでいる。山をナメると、痛い目に遭うばかりか、運が悪ければ命を落とすことになってしまうので、くれぐれもご注意を。

秋の山でまず気をつけなければならないのは、日の短さだ。「秋の日はつるべ落とし」と例えられるように、秋の日暮れは思いのほか早く感じられ、陽が沈むと間もなく真っ暗になる。まして山間部では、なおさら暗くなるのが早い。このため、日の入り時刻を考慮しておかないと、日没までに下山できなくなり、道に迷ったり行動不能に陥ったりしてしまう。

たとえば2022年10月9日、山梨県大月市の滝子山(1620メートル)で、20代の男性と50代の女性の2人パーティが下山中に道に迷い、救助を要請するという事故があった。2人はヘッドランプを持っておらず、下山前に陽が暮れて行動できなくなってしまったという。

秋の登山の理想的な計画

秋の登山計画を立てるときには、行動時間が長くなるコースはなるべく避け、午後の早いうちに下山できるようにしたい。近年は昼前後に登山を開始するなど、出発時間が遅すぎて遭難するケースも目立つ。「早出早着」は登山の大原則であり、行動に余裕を持たせるためにも早いスタートを心掛けよう。

もちろんヘッドランプとツエルト(簡易テント)は必携。ヘッドランプがあれば陽が暮れても行動を続けられるし、万一、山中で一夜を明かさなければならなくなった場合には、寒さや風雨を防ぐのにツエルトが役に立ってくれる。

なお、アプローチに利用する交通機関、とくに最寄り駅~登山口(下山口)のバスは、夏のハイシーズンが終わると運行ダイヤが変わり、減便したり、土曜・休日以外は運休となったりすることもある。ダイヤは事前にしっかり確認しておこう。