落ち葉で滑って右足首骨折

落葉広葉樹林の森では、紅葉が終わって葉が落ちると、見通しが良くなって地形を判別しやすくなる。しかしその反面、落ち葉が登山道を隠し、場所によってはコースがわかりにくくなっているところがある。うっかりしていると、いつの間にかコースを外れてしまうので、登山道がどの方向に続いているのか、注意深く観察しながら行動すること。

また、積もった落ち葉自体が滑りやすいうえ、地面の凹凸や石などを隠してしまうため、スリップや転倒を招くこともある。2022年11月12日には、長野県栄村の鳥甲山の標高約1150メートル地点で、単独行の40代男性が下山中に落ち葉で足を滑らせて転倒し、救助を要請するという事故も起きている。男性は出動した消防隊員らによって救助され、病院に搬送されたが、右足首を骨折する重症だった。

とくに片側が谷に落ち込んでいる狭い登山道に落ち葉が積もっているところでは、落ち葉で足を滑らすことが致命的な滑落につながってしまう。隠されたリスクをいち早く察知するのはなかなか容易ではないが、周囲の状況をよく観察して上手に回避したい。

クマに激突して崖から転落死

秋に活動が活発化するクマとスズメバチにも警戒が必要だ。

2020年9月5日、群馬県中之条町の蟻川岳(853メートル)で、40代男性がクマに襲われて負傷した。男性は単独で下山しているときに、約20メートル前方から2頭のクマが歩いてくるのに遭遇。

あとずさりしたところ、小さいほうのクマに襲われ、頭部や顔面を引っ掻かれたうえ、左手に噛み付かれた。クマの退散後、男性は自力で下山。東吾妻町内の病院に搬送された。

2022年10月1日には、埼玉県秩父・二子山(1166メートル)の上級者向け岩稜ルートでもクマによる襲撃事故が起きている。

襲われたのは40代の男性単独行者で、西岳の山頂から切り立った岩稜を下っているときに、突如としてクマが駆け下りてきて飛び掛かられたのだ。

その最初の一撃はすんでのところでかわしたが、今度は下から攻撃を仕掛けてきた。男性は拳を振り下ろし必死で対抗し、20秒ほどの攻防の末にクマは退散していった(クマは子連れだった)。よくぞ助かったものだと思う。

その動画がYouTubeで公開されている。クマに襲われたときの男性の叫び声やしつこく襲ってくるクマの姿があまりに衝撃的だ。

ちなみにこの年には奈良県大峰山系の(1780メートル)近くの登山道で、40代男性がクマに体当たりされて、崖からクマ一緒に約30メートル転落し、命を落としている。この事故が起きたのが12月14日。クマは冬眠に備え、エサとなる堅果類などを求めて秋に活発に活動するが、堅果類の結実量は年によって豊凶がある。冬になってもまだ活動していることもあるので、安心はできない。

ヒグマ
写真=iStock.com/Thomas Faull
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