なぜナマケモノは怠けるようになったのか。静岡大学農学部の稲垣栄洋教授は「ナマケモノのスローな動きは、まさに勝ち抜くための戦略だ。もし、ナマケモノがすばやく動こうとしていたら、滅んでしまっていたことだろう」という――。
※本稿は、稲垣栄洋『ナマケモノは、なぜ怠けるのか? 生き物の個性と進化のふしぎ』(ちくまプリマー新書)の第2章(「にぶい」生き物)を再編集したものです。
9割の生物が絶滅し、ダンゴムシは生き残った
①ダンゴムシ
ダンゴムシは、子どもたちにとって身近な生物である。ダンゴムシは「まる虫」とも呼ばれている。子どもたちがつつくと、ダンゴムシは丸くなる。そのため、だんご虫とか、まる虫とか言われているのだ。きれいな球体になるので、転がすとコロコロと転がる。
丸まった姿は、小さな子どもたちにもつかまえやすいので、子どもたちの恰好のおもちゃになっている。そして、つかまえられて、集められて、転がされているのだ。
神さまはどうして、こんなさえない生き物をお創りになったのだろう。
はるか昔。それは、恐竜がいた時代よりも、はるか昔の話である。
五億年以上も昔の古生代の地球では、多種多様な生物たちが著しい進化を遂げていた。生物たちの種類が爆発的に増加したこの現象は、「カンブリアの大爆発」と呼ばれている。
ところが、である。
この時代に繁栄した多くの生物は、古生代末期に突如として姿を消してしまう。これがベルム紀末期(二億五一〇〇万年前頃)の大量絶滅である。この大量絶滅は、恐竜が絶滅した白亜紀末期の大量絶滅を上回るもので、地球上の九〇パーセントもの生物が死に絶えたとされている。
いったい何が起こったというのだろう。