怠けているようにしか見えないナマケモノの生存戦略

②ナマケモノ

その名もナマケモノという生き物がいる。

「ナマケモノ」の名はあだ名ではない。「ナマケモノ」が正式な名前である。ナマケモノは「怠け者」という意味である。怠けているように見えることから、ナマケモノと名付けられたのだ。

ナマケモノは、ほとんど動かない。一日中寝てばかりいる。動くときも、その動きはゆっくりである。エサを食べに行くときも、面倒くさそうにゆっくりと移動して、ゆっくりとエサを食べる。

まさに、怠け者だ。神さまはどうして、こんな愚鈍な生き物をお創りになったのだろう。

そもそも、どうしてすばやく動かなければいけないのだろう。ただすばやく動いても、エネルギーを無駄に消費するだけである。実際に動きのすばやいネズミなどは、エネルギーを確保するために、常にエサを探し回り続けなければならない。

一方のナマケモノはどうだろう。ほとんどエネルギーを消費しないので、エサも少しでいい。ナマケモノが食べるのは植物の葉っぱである。植物の葉っぱは、栄養が少ないので、葉っぱだけで栄養を得ようとすると、大量に食べなければならない。

草原のウシやウマが大量に草を食べるのは、草だけを食べてエネルギーを確保しなければならないからだ。

ナマケモノ
写真=iStock.com/Rob Jansen
※写真はイメージです

動かないから、食事量はウシの1000分の1で済む

しかしナマケモノは、エネルギーは少しでいいので、葉っぱを少しだけ食べればいい。一回に数グラム程度、食事の頻度も少なく、ウシの一〇〇〇分の一ほどの量だ。とっても、省エネな生き方なのだ。

それだけではない。私たち人間は体温が三六度くらいある。暑い日も寒い日も、同じくらいの体温である。この体温を維持するためにも、エネルギーを使う。ところが、ナマケモノは違う。無理に体温を維持しないので、無駄にエネルギーを使うことがないのだ。

しかし動物が速く動くのは、肉食の天敵から逃れるという意味もある。速く走ることができないと、肉食動物にやられてしまうのではないだろうか。

実際にナマケモノが棲む中央アメリカや南アメリカには、ピューマやジャガーなどの猛獣が暮らしている。ナマケモノは大丈夫なのだろうか。

肉食動物の動きを察知すると、動物たちは一目散に逃げる。そのため、肉食動物の目は、動くものに反応するようになっている。そして逃げ出した動物たちを追いかけるのだ。ところが、ナマケモノはほとんど動かない。そのため、動くものを探す肉食動物の目には、木立こだちの中で動かないナマケモノは目に入らないのだ。