甲殻類で最も陸上に適応した生き物になった

ベルム紀末期の大量絶滅の原因は、なぞに包まれている。一説には大規模な火山活動があったのではないかと言われているし、恐竜が絶滅したときと同じように小惑星が地球に衝突したのではないかとも言われている。

古生代の海で、もっとも繁栄した生物は三葉虫である。残念ながら、三葉虫もまたこの大量絶滅で姿を消してしまった。しかし、この三葉虫が私たちのすぐそばで、命をつないでいる。それが、ダンゴムシである。

ダンゴムシは三葉虫の仲間から進化を遂げたとされている。そう言えば、ダンゴムシは三葉虫とよく似ている。多くの生き物が滅んだベルム紀の大量絶滅も、恐竜さえ絶滅した白亜紀の大量絶滅も乗り越えて、果てしない地球の歴史を生き抜いてきたのだ。

ダンゴムシ
写真=iStock.com/Werhane
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ダンゴムシはじつに進化した虫である。何しろ、祖先の三葉虫は海の中に暮らしていたが、ダンゴムシは見事に陸上に進出した。ダンゴムシや三葉虫は甲殻類と呼ばれている。これは、カニやエビの仲間である。

カニやエビなどの甲殻類は、ほとんどが今も水の中か水辺で暮らしている。甲殻類の中でダンゴムシほど陸上生活に適応したものはいないのである。

私たち人類も魚類から両生類、爬虫類はちゅうるい、哺乳類へと進化をしたが、魚類から両生類へと陸上生活に適応するときには、海から川へと進入し、川から湿地へと上陸を果たしたとされている。そのため、カエルやサンショウウオなど両生類は淡水の環境で見られる。

五億年の進化の最新形

また、昆虫の仲間も淡水の湿地に暮らしていた節足動物が陸上へと進出して昆虫へと進化した。そのため、地球上には多くの昆虫が繁栄しているが、海水に暮らす昆虫はほとんどいないのである。

脊椎動物も昆虫も、川や湿地など淡水の環境に適応し、次第に浅いところにむようになって、やがて陸に進出をした。海から陸へと進出することは簡単ではなかったのだ。

ところがダンゴムシは、海から直接、陸地へと進出を果たしたと考えられている。ダンゴムシの仲間にはフナムシやワラジムシがいるが、フナムシは波しぶきのかかるいそなどに見られる。そしてワラジムシは陸上をすみかとしているが、湿った場所を好む。

ダンゴムシはフナムシの仲間からワラジムシの仲間に進化し、さらに乾燥地帯に適応して進化を遂げたと考えられているのだ。

ダンゴムシが丸くなるのは、敵から身を守るだけでなく、むしろ乾燥から身を守るという役割がある。背中の堅い装甲も、水分が蒸発するのを防ぐために発達したものなのである。

ダンゴムシは五億年の進化の最新形なのだ。

だからね、丸まっているダンゴムシも、そのままでいいんだよ。