「最強の哺乳類」と呼ばれた真面目なナマケモノは絶滅した

しかもナマケモノは、あまりに動かないので、体に緑色のコケが生えてしまうことがあるという。このコケが、カモフラージュしてナマケモノを見えにくくするのに役立っているというから、すごい。こうしてナマケモノは身を守っている。

かつて、一万年ほど昔には、メガテリウムという巨大なナマケモノの仲間が地球に君臨していたという。その大きさは全長六~八メートル、体重は三トンにもなるというから、かなり巨大だ。まさに、最強の哺乳類だったのである。

もちろん、メガテリウムは怠け者ではない。おそらくは、活発に行動し、巨体を維持するために、エサもたくさん食べて、敵に襲われれば敢然と戦ったことだろう。

しかし、そんな無敵な強さを誇った巨大なナマケモノが滅んでしまった。そして、動きのゆっくりなナマケモノが生き残ったのである。進化は生き残ったものが勝者である。そうだとすれば、のろまなナマケモノが勝利したのだ。

ナマケモノのスローな動きは、まさに勝ち抜くための戦略である。もし、ナマケモノがすばやく動こうとしていたら、滅んでしまっていたことだろう。

のんびりなナマケモノはとても優れた生き物だったのだ。

だからね、寝てばかりいるナマケモノも、そのままでいいんだよ。

ダラス世界水族館のミツユビナマケモノ
ダラス世界水族館のミツユビナマケモノ(写真=Sergiodelgado/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

すばやさに対抗する逆張り戦略

③スローロリス

スローロリスのエサは、動き回る昆虫である。昆虫をエサにする動物は大変である。

すばやく動く昆虫をつかまえるためには、相当のスピードでつかまえなければならない。しかし、昆虫もつかまって食べられたくないから、さらにすばやく動くように進化を遂げる。そんな昆虫をつかまえるためには、動物の方もさらにスピードアップしなければならない。

まさに終わりなきスピード競争だ。その結果、すばやく動く昆虫とすばやく動く動物が、共に進化を遂げてきたのだ。それでも、すばやく動く昆虫をつかまえるのは、簡単なことではない。

それなのに、昆虫をエサにするはずのスローロリスは、すばやく動くことができない。

その名のとおり、動きがスローなのである。

神さまはどうして、こんなふしぎな生き物をお創りになったのだろう。すばやく動く昆虫を捕らえるには、すばやく動かなければならない。しかし、スピードアップにも限界がある。

そこで、スローロリスが考えた戦略はこうだ。

「動きが見えないくらいスピードを遅くする」

昆虫は敵からすばやく逃げなければならない。そのため、すばやく動くものに敏感だ。どんなにすばやく襲いかかっても、その動きを察知して逃げてしまう。すばやく逃げる昆虫を捕らえることは簡単ではないのだ。