楽天モバイルが独自のプラチナバンドをようやく獲得

2023年10月23日、総務省は楽天モバイルに対して700MHz帯の周波数帯を割り当てると発表した。

700MHz帯は、通信業界的には「プラチナバンド」と呼ばれている。街中にアンテナを建てた場合、ビルの中によく浸透するため、建物の中心部でもスマートフォンがつながりやすくなる。

また、よく飛ぶ電波でもあるため、郊外であれば、少ないアンテナで広いエリアをカバーすることが可能だ。

楽天モバイルはこれまで4Gにおいては1.7GHz帯しかもっておらず、繁華街やビル内などはつながりにくいとされていた。そのため、KDDIと契約し、ローミングというかたちで、楽天モバイルユーザーはKDDIが持つプラチナバンドに接続していたのだ。

もちろん、楽天モバイルはKDDIに対して、接続料を支払う必要がある。この金額が年間、数百億円規模であったため、楽天モバイルはいつまで経っても赤字体質を脱却できない状態に陥っていたのだ。そのため、今回、プラチナバンドを手に入れたことで、ようやくKDDIの呪縛から解かれることになったのだ。

楽天モバイルの三木谷浩史社長
楽天モバイルの三木谷浩史社長(写真=Guillaume Paumier/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

「貧乏くじ」とささやかれる楽天モバイルのプラチナバンド

ただ、今回、楽天モバイルに割り当てられたプラチナバンドは3MHz幅しかない。他のキャリアは25MHz幅も持っているのとは対照的だ。楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てる際、NTTドコモがようやくプラチナバンドのなかにある「隙間」を見つけ、「ここならかろうじて使えるかも」という提案があって、楽天モバイルに割り当てられたのであった。

NTTドコモがここまで楽天モバイルに配慮したのは、かつて、楽天モバイルが「3キャリアからプラチナバンドの一部を返上させ、楽天モバイルに再割り当てするべきだ。しかも、楽天モバイルは一円も負担する気は無い」と強気に総務省ならびに3キャリアに迫ったからだ。

NTTドコモやKDDI、ソフトバンクとしては虎の子であるプラチナバンドを楽天モバイルに奪われるのはたまったものではない。そこで、NTTドコモが必死に空いているプラチナバンドを探し出し、総務省に対して「楽天モバイルに割り当てたらどうだ」と提案したのだった。

この打開策によって、3キャリアはプラチナバンドを返上することなく、楽天モバイルもすぐにプラチナバンドでのサービスを提供できるようになった。

ただ、3MHz幅というとても狭い周波数帯であるため「楽天モバイルはNTTドコモに貧乏くじを引かされた」とささやく業界関係者もいるほどだ。