ネット配信が“必須業務”になったNHK

NHKのネット事業が「放送」と同じ「必須(本来)業務」に位置づけられることになった。1950年に「放送」を行うために創業したNHKにとって、「放送」も「ネット」も行う「第二の創業」となる歴史的転換点を迎える。

総務省の有識者会議「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」が8月末にとりまとめた報告書で、「ネット」の必須業務化が確定、「ネット受信料」の創設も盛り込まれた。

スマートフォンで動画視聴する人の手元
写真=iStock.com/Worawee Meepian
※写真はイメージです

パブリックコメント(意見募集)も9月末に締め切られ、年内に細部を詰めたうえで、放送法の改正案を作成、早ければ2024年の通常国会で成立する見通しで、NHKは名実ともに「公共放送」から「公共メディア」に変貌する。

ネット事業を「放送の補完業務」から「放送と同様の必須業務」に格上げすることは、NHKの長年の「悲願」だった。テレビ離れ・NHK離れが急速に進み受信料収入の減少が確実視される中、テレビを持たない人にネットで番組を提供し受信料を徴収することが持続的な経営安定の必須条件と捉えているからだ。

メディアやコミュニケーションの主舞台が「ネット」に移行し、オールドメディアの仲間である新聞社や民放局が特段の規制もされずにネットへのシフトを強める中、NHKだけが「放送限定」という放送法に縛られていた枠組みから、ようやく解放されることになる。その意味では、歴史の必然ということもできよう。

ただ、「ネット」が必須業務になった場合の詰めの議論はこれからで、「公共メディア」の再定義や「ネット受信料」の枠組みなど、整理しなければならない新たな難題が山ほど待ち受けている。

テレビがなくてもNHKが見られる環境づくり

NHKは早くから、「ネット」の必須業務化に向けて着々と布石を打ってきた。

文字ニュースの「NHK NEWS WEB」を立ち上げ、過去に放送した番組を有料配信する「NHKオンデマンド」をスタート、そして放送と同時に番組を配信する「NHKプラス」のサービスを開始した。一方、水面下では、永田町や霞が関の応援団づくりに腐心し、周到に根回しを進めてきた。