ヒトラーを退けたことでスターリンは英雄になった

【松本】ソ連はスターリンのもとで、1941年に始まる独ソ戦を勝ち抜きます。このことから、スターリンを正当化するような論調もあります。

【茂木】皮肉なことに、ヒトラーがスターリンを助けたのです。あの戦争はどう見ても、ヒトラーが悪い。だからスターリンが正義になってしまった。それまでスターリンにひどい目に遭わされたロシア国民も、ヒトラーを退けたことで「スターリン万歳」になりました。スターリンはたちまち英雄です。

【松本】戦争に勝利したことによって、社会主義が世界的に正当化されたという点はありますね。

茂木誠・松本誠一郎『“いまの世界”がわかる哲学&近現代史 プーチン、全体主義、保守主義』(マガジンハウス新書)
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【茂木】一番大きかったのは、ヒトラーを倒すために西側の大国である英米がスターリンと手を組んでしまった、ということです。

【松本】そして、「社会主義は素晴らしい」ということになり、第二次世界大戦後に社会主義化の動きが世界に広がっていくわけですね。

【茂木】ソ連という国は、それまでは世界のつまはじき者でした。それが、第二次大戦によって一躍、世界のリーダーになり、国際連合の常任理事国になった。ナチス・ドイツが滅んだあとのヨーロッパについては、アメリカとソ連が山分けすることになったのです。東ヨーロッパにソビエト型の共産党体制がどんどん移植されました。ノースコリア(北朝鮮)の建国も同じ流れです。

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