さて、私の経験から言うと、一度、家の購入をした人は、概して持ち家志向が強い。住み替えるなら、次も分譲マンションか一戸建てを購入したいと考えるケースが多いのではないか。

前の家を売却してローンが残る場合、次の家で「住み替えローン」を利用すると前の残債も合わせて借りることができる。しかし、40代以降でローンを増やすのは考えものだ。

サラリーマンの場合、50代後半から収入が減少するケースが多い。定年を迎えたら収入はゼロ、年金も65歳までは出ない。この現実を踏まえて試算すると、40代でのローン借入額は2000万円程度が限界だろう。2000万円であれば、金利を当初10年間2%、11年目以降3%で借りたと仮定して、毎月約10万円ずつ返済すれば、60歳時には残債は約590万円。ところが3000万円になると、同じ条件で毎月約11万円返しても、60歳でのローン残高は約1760万円。退職金で精算しようとすれば、老後の資金にしわ寄せが生じる。

地盤に不安のある地域で一戸建ての場合、安易に住み替えを考える前に、地盤強化工事を検討してみる手もある。工事費の目安は500万~1000万円。住宅金融支援機構の災害復興住宅融資には土地に対するものもあり、銀行の住宅ローンでも地盤強化費用に貸してもらえる場合はある。

どうしてもすぐ引っ越したいなら、持ち家はそのままで、当面は安心して暮らせる賃貸に仮住まいしてはどうだろうか。大震災が起きてからまだ3カ月ほど。新たな補助的制度ができる可能性もあり、今、停滞している不動産市況も戻ってくるかもしれない。家を貸したり売ったり、ましてやローンを組んで新居を買うという後戻りできない選択は、今すぐにはしないほうがいいと私は考える。

持ち家のローンを払いながら、さらに家賃を払うのを無駄に感じる人もいるだろうが、年内いっぱい住んでも家賃の支出は数十万円程度のはず。結論を急いで数千万円も無駄にするリスクよりはるかに少ないはずだ。

(構成=上島寿子)
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