震災復興の財源として子ども手当の廃止や消費税増税が取り沙汰されているが、まず「何をやるか」を決めてから「いくら必要か」「財源をどうするか」を考えるべきだろう。私は震災後の4月上旬に被災地を訪れたが、ここからの復興は、予算の組み替えや消費税増税で数兆円を捻出したところで、どうなるものでもない。
むしろ日本の再生をかけて、東北をイノベーションの拠点に据えるべきだ。具体的には、東北にクリーンエネルギーのモデル都市を築き、電力の安定供給を求める企業や東海地震に罹災しそうな企業が生産拠点を移すことを促す。多くの雇用が生まれるだけでなく、この10年間で100兆円も増やし総額250兆円にも達する膨大な企業の内部留保を、復興目的も兼ねて使うことができる。産業育成という創設時の役割を終えた経済産業省は東北に移転させ、復興省として再生を担えばいい。
では財源はどうするか。私は日銀が保有する約70兆円の米国債を担保に、政府は日銀から金を借り、緊急時の1回限りという条件で日銀引き受けをしてもらう方法がベストと考える。国債の日銀引き受けは、そもそも1913年から7度にわたり大蔵大臣を務めた高橋是清が、昭和恐慌脱出のために使った手法。その後、戦費調達の打ち出の小槌として軍部に濫用されて財政破綻を招いたため、現在は財政法5条で禁じられている。しかし同条のただし書きには、「特別の事由がある場合にはこの限りではない」とある。
今回の大震災は、まさに「特別の事由」といえるので、1回に限り、この禁じ手を使うのだ。もともとデフレなので、20兆円ほどのデフレギャップがあるし、震災で20兆円近く失われているので、すぐにハイパーインフレを招くことはない。もちろん、我々の家計にも直接被害を与えることはないだろう。担保として供する米国債も、売るのでなければ米国政府も了解してくれるのではないか。
もう一つの有力案「消費税増税」は最悪の方法だ。デフレ不況を克服できないまま、消費活動が停滞しているのに、景気がますます落ち込んでしまう。