東日本大震災により、建物の耐震性や地盤への不安が持ち上がり、住み替えを検討している人もいるようだ。現在の住居が賃貸なら、別の賃貸に引っ越せばいいだけだが、家を購入してローンを抱えている場合、そう簡単にはいかない。

持ち家の場合、まず、今の住まいをどうするかが課題になる。もし、売却するのであれば、当然のことながら、買い手がつかなければ話にならない。しかし、超高層や湾岸エリアのマンション販売が急減しているという報道もあり、何らかのリスクを抱える物件は売りにくい状況にある。購入者が現れたとしても、買い叩かれてしまいかねない。ローンの残債より売却価格が安ければ、当然、その差額は自己負担。ローン残債が少ないことと、貯蓄に余裕があることが売却の必須条件となる。

貸すという選択もあるが、これも簡単ではない。特に注意したいのは、賃貸に出すとローンの返済額が上がる可能性がある点だ。住宅融資は本人の居住が前提であり、他人に貸すときには原則としてアパートローン等への切り替えが必要になる。すると従前の金利優遇が受けられず、返済もアップする。一例を挙げると、1.9%優遇の10年固定なら、優遇がなくなると2%から4%近くまで跳ね上がる。

さらに、固定資産税や団体信用生命保険は大家負担となり、マンションの場合は修繕積立金、管理費なども自分で払わなくてはいけない。これらを毎月のローン返済額に上乗せした金額以上で貸せない場合は赤字になり、差額を貯蓄から補填しなければならなくなる。住宅を購入するときも、「何かあれば貸せばいい」と安易に考えがちだが、そう簡単な話ではないことを肝に銘じておくべきだ。