負担額を50年の長期で試算すると
住宅スゴロクといえば、かつては賃貸住まいからスタートして貯蓄に励み、頭金相当のお金が貯まったらマンションを購入、その後、マンションを転売して、最後は一戸建てを買うというのが上がりのパターンだった。これをサポートしたのが、地価は下がらないという土地神話と年功序列賃金だ。
いま40代、50代で持ち家に住んでいる人の多くも、当初はその住宅スゴロクで上がりを目指した。彼らが家を買ったのは、1980年代後半から90年代にかけての時期ではないだろうか。不動産価格が高騰したバブル期から、その崩壊によって不動産価格が急落し、業者が盛んに「お買い得」と囃した95~96年あたりまでに住まいを購入した人たちは、やがて住宅スゴロクがまったく意味のないものだったことを思い知ることになる。
地価はその後も下がり続けた。底打ち傾向が見られるようになったのは、世紀をまたいだ2004~05年ごろである。底を打ったといっても、都市部が中心で、依然として値下がり、横ばい地域も多い。そしていま、再び地価の下落が始まった。給料の伸び悩みも決定的になっている。アメリカ発の金融危機は、人々に深刻な不況の訪れを予感させている。
持ち家住まいの40代、50代世帯は、これまで低金利の住宅ローンに借り換えたり、生活費を切り詰めて、繰り上げ返済してきた。だが、経済情勢の変化になすすべもなく立ち竦む。将来を考えれば、年金や高齢者医療、増税などの問題も山積しており、老後への不安はなかなか解消されない。
しかし、思案に暮れてばかりはいられない。そこで、時代にあった新しい住まい方、人生後半期の住宅スゴロクを提案したい。実は、持ち家に住む人と賃貸住まいの人の経済的負担を50年の長期で試算すると、意外なことに負担額はそれほど変わらない。
4000万円相当の戸建てを買った場合の負担額は、ローン金利やリフォーム代、維持費などを含めると約9700万円だ。同じくマンションでは約1億円。4000万円相当の部屋を借りて住んだ場合は、家賃と更新料などで9800万円の負担になる。
いずれも50年間で1億円見当の負担だが、サラリーマン時代の総収入は2億5000万円前後なので、このうちの4割相当が住まいの費用として消えてしまう計算だ。その分を年金で補って余りあるというのなら、老後に何の心配もない。
しかし、後ほどふれるが、それはほとんど不可能に近い。自助努力で老後の生活資金を蓄えようと頑張っても思うようにならず不安を抱えてしまう大きな要因は、住まいの経済的負担が重いからだ。ならば、生涯で1億円もの負担のある“金食い虫”の住まいを働かせて、お金を生み出してもらうことを考えるべきだろう。