増税して税収が増えるのならまだいい。しかし過去の例、97年に消費税を3%から5%に引き上げた際は、後に税収は落ち込み、一般会計税収は97年度の約54兆円から09年度には約37兆円にまで減少した。デフレ経済が進行する中、大企業などに対する取引の力関係によって、消費税分を商品価格に転嫁できないまま納税負担を抱えた中小零細企業が相次いで経営破綻した結果、消費税の滞納が激増したという側面がある。ずれにせよ、大震災が日本経済に与える被害は甚大なので、当面、一般の家計はこれまで以上に厳しくなることを覚悟しなくてはならない。基本的には「守りの姿勢が第一」だ。東電株を見るまでもなく、今の市場は株も為替も異常なほど投機色を強めており、素人の手に負えるものではない。やはりここは、投資より預貯金のウエートを増やすことだ。

余裕があれば、被災地への寄付も考えよう。お勧めの方法は「ふるさと納税」。特定の自治体に納税ではなく寄付を行い、受け取った受領証を添付して確定申告すると、税額控除され、結果、所得税・住民税が安くなるという制度だ。寄付する自治体は出身地に限らず、自由に選べる。利用にあたっては一定の制限や限度があり、控除の効果は世帯収入や家族構成によっても違う。例えば、年収700万円、夫婦に子供2人、所得税率と住民税率がともに10%のサラリーマン家庭が4万円寄付すると、所得税・住民税を合わせて約3万5000円控除され、実質的な自己負担は5000円程度になる。つまり、5000円の寄付行為で、4万円の効果を実現できるのだ。

(構成=有山典子)