順調にキャリアの階段を上っていたAさん
こんにちは。産業医の武神です。私は毎年のべ300~400人の休職者と産業医面談をしています。その中で必ずあるのが、周囲の人々による「休職中のAさんに、励まし/お見舞いの連絡をしてもいいですか?」という質問です。
質問主が、上司であれ、同僚であれ、他部署の人や上司の上司であれ、産業医の答えは「本人から連絡があるまでそっとしておいてあげてください」で、いつも同じです。
なかなか納得を得られないこの答えに、今日はしっかりと解説を加えて、産業医の真意をお伝えさせていただきたいと思います。
私のクライエントの外資系企業でのお話です。
Aさんは30代半ばの独身女性社員でした。入社6年目の彼女は、誰とでも裏表なく接し、自分の意見をしっかり言える方で、部下からの人望も厚く、いい意味で社内で顔が広い方でした。昨年部署内で昇進も果たし、順調にキャリアの階段を上っていくと思われていましたが、今年になり、Aさんを昇進させてくれた上司が急に自己都合で退職してしまいました。
数カ月後、新たに上司として日本の同業他社からBさんが入社しました。新しい上司ともいろいろと建設的な意見交換を行い、部署のため、チームのため頑張ろうと張り切ったAさんでした。が、Bさんとは相性が合わなかったらしく、次第にAさんは元気がなくなりました。心療内科にも通いはじめたものの症状は改善せず、最終的に休職になってしまいました。
上司「人事が連絡先を教えてくれない」
①直属の上司から休職者に連絡を取っていいか?
Aさんの休職開始後、私は産業医として毎月Aさんと面談をすることとなりました。すると人事を通じてAさんの上司(Bさん)が産業医に質問があるとのことで、Bさんとの面談が設けられました。
【B】休職中のAさんに、連絡を取りたいんだけれども、人事が連絡先を教えてくれない。どうにかしてほしい(どうしてだ!)。
【私】連絡して、何を伝えたいんですか?
【B】部署の仕事は気にせずに治療に専念してほしいこと。みんなAさんの回復を願っていること。私は入社して日が浅くわからないことがまだまだあるので、Aさんに片腕となってサポートしてほしいこと。などを伝えて、頑張って良くなってほしいと思っている。
【私】お気持ちどうもありがとうございます。しかしながら、産業医としては、Aさんは今治療に専念すべき時期なので、ビジネスサイドからの連絡はその妨げになる可能性があり、ご遠慮いただければと思います。Aさんの回復を願うのであれば、そう伝えたいその気持ちを我慢してください。