何歳論が最も多いのか?

今回扱うのは「20代」「30代」「40代」といった、「○○代」という言葉がタイトルに含まれる書籍なのですが、人生のこの時期にこれこれをせよという類の書籍にはもう1つ、タイトルのパターンがあります。単純な話で、「○○歳からの~」というような、特定の年齢を切り口にするパターンです。

「年代本」は20代を扱うものが最も多かったのですが、では「○○歳」という特定年齢を扱うものの場合(「年齢本」と呼ぶことにします)、一体何歳が最も多いのでしょうか。先程と同様に、『国立国会図書館サーチ』の件名「人生訓」で、タイトルに「12歳」から「60歳」までが含まれている書籍を集計したものが図2です。

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※「国立国会図書館サーチ」調べ。件名「人生訓」、検索キーワード「12歳」から「60歳」まで。検索日:2012年9月3日。

「年代本」だと20代が最も多かったのですが、「年齢本」では40歳が最も多いことが分かります。年代ごとに集計すると、10代が27冊、20代が61冊、30代が68冊、40代が67冊、50代が49冊と、20代から40代の間で大きな差はありません。

しかし、20代は20歳、25歳、28歳、29歳と、扱われる年齢が散らばっているのに対し、30代は30歳と35歳の二か所に集中し、40代は40歳に圧倒的に集中しています。40代は、40歳が57冊の他は45歳が7冊あるのみで、他は41歳、42歳、48歳で各1冊ずつとなっています。そして50歳で36冊と再び盛り上がります。

これらから考えると、20代はつねに「ここがターニングポイントだ」と論じることができる年代のようです。大人になる20歳、仕事にも慣れてきた25歳、30歳を目の前にした28歳と29歳というようにです。20代ではその年ごと、あるいはせいぜい3年前後のスパンで異なった展望が求められているといえるのかもしれません。

一方30代、40代と進むにしたがって、ターニングポイントの間隔は広がっていきます。30代は30歳と35歳に集中していることを考えると5年スパンの展望が、40代は40歳に一極集中していることを考えると10年スパンの展望が、それぞれ求められているということでしょうか。

さて、ここまで「年代本」「年齢本」の概要を見てきました。本連載の趣旨にもとづいて「年代本」「年齢本」を位置づけておくと、それらは、私たちの日常生活のなかではしばしば曖昧なままにされがちの「ライフコース=人生航路」の展望について、端的にあるべき方向を指し示してくれるものだといえます。では、現代における、あるべきライフコースはどのように「結晶化」されているのでしょうか。また、そこからどのような現代社会の様相が見えてくるのでしょうか。

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