「あずきバー」は1本に約100粒の小豆入り

「あずきバー」(井村屋)は発売50年。龍田健介さん(商品営業企画部 課長)はこう話す。

「3月には13年ぶりに、『あずきバー』の全面リニューアルを実施し、抹茶・ミルクは『金時』のネーミングを外し、『あずきバーミルク』『あずきバー抹茶』に名前を変更しました。また、今年7 月 1 日の『あずきバーの日』には4年ぶりに対面でのあずきバーサンプリングイベントを開催。“あずきバーの夏祭り”と題して、東京・大阪・名古屋で合計1万5000本のサンプルを配布しました」

井村屋の前身は明治時代に創業された和菓子屋。戦後の高度成長期にアイスクリーム事業にも進出し、自社の得意技術だった「あずき」をもとに、「ぜんざいを凍らせたようなアイスができないか?」の視点で商品を開発した。それ以来、基本スタンスは変えていない。

「1本に約100粒の小豆量。発売以来、どれだけ小豆が不作でも、原料価格が暴騰しても、ずっと守り続けてきました。余計なものを一切加えていない、自然な小豆のおいしさが愛されていると思います」(商品開発部 部長代理 嶋田孝弘さん)

支持する層は中高年女性が多いと聞いていたが、若い世代も支持する。「小豆が好きだしカロリー高くないから、あずきバー見つけたら選んじゃう」(30代女性)、「小豆の甘さがさっぱりで、冷たい和菓子が食べたい時にぴったり」(別の30代女性)の声も聞いた。

アイスに対して保守的な日本人

ロングセラー商品の強さには、消費者の安定志向も大きいようだ。メーカー側も「バニラ」や「チョコ」「抹茶」などの定番を大切にしつつ、期間限定品の発売などで鮮度を打ち出す。

過去の取材では「新商品開発時のフレーバー調査でも、斬新な味は支持されず、イメージできる味が支持される傾向が強い」(複数のメーカーの声)という話を聞いてきた。

「甘くておいしい」という基本性能を踏まえつつ、変化球の味をつけても定着しにくい。

たとえば、野菜味を打ち出したアイスは、これまでいくつかのメーカーから発売されたが、定番化しなかった。息抜きやご褒美で選ぶ消費者心理と、野菜味はミスマッチなのか。

“永遠の小学生”を打ち出し、少しやんちゃさも持ち味の「ガリガリ君」は、過去にコーンポタージュ味、シチュー味を出してヒットさせた。その勢いで、ナポリタン味も発売したが、まったく売れなかった。

同社に限らず、だから無難な味で……という関係者はいないだろう。メーカーの開発現場には「絶えざる革新」という共通認識があり、過去のフレーバーでは「きなこ」や「桃」「マンゴー」をヒット作にしてきた歴史もある。新たな取り組みの成果も期待したい。

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