結婚後にセックスレスになる夫婦は多いが、結婚前から肉体関係を持たない夫婦もいる。なぜなのか。ノンフィクション作家、家田荘子さんの『大人処女  彼女たちの選択には理由がある』(祥伝社新書)より、33歳の女性のケースを紹介する――。
ベッドに腰かけ、窓からのぞく外の光を見つめる女性
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手をつないだことも、ハグをしたこともない

「今の夫でよかったと思います。こんな変わった生活を一緒にできる人って限られていますよね。夫に対して情か愛情か、わかんないんですけど、今のままの生活、このままの状態を続けていきたいと思うんです」

梓さん(仮名、33歳)と、19歳年上のイラン人の夫・A氏(52歳)とは、とても個性的な夫婦関係だ。

2人の間には一度も肉体関係がない。婚約した時から同居をしているが、手をつないだことも、ハグをしたこともない。古物商の資格を持つA氏は現在、国内でリサイクル業もしていて日本は長く、ビザ目的の結婚でもない。

見かけは清楚な女性が、なぜ派手なバイトを?

私は梓さんに5年前、彼女が都内のバーで週3日アルバイトをしている時に、そこのママを介して出逢った。個性の強い老若男女の客が集まるにぎやかな店のなかで、お嬢さんの雰囲気を持つ清楚な梓さんの姿は目立っていた。

その時、梓さんはまだシングルで、男性未経験と聞いていた。その後、店が閉店し、私は梓さんに会う機会を失ってしまったが、今回の取材を始めて以来、ずっと梓さんのことが気になっていた。そしてついにあのバーのママを通じて、梓さんに再会することができた。

梓さんは、妻になっていた。28歳の頃と変わらず、ふくよかで清楚なお嬢さんの雰囲気を持つ女性だった。白いブラウスにふんわりしたスカートが彼女らしさを強調していて、変わらず好印象を受けた。

派手なバーでアルバイト、見かけは清楚なお嬢さん――私にはとてもアンバランスに思えた。いったい、梓さんはどういう少女時代を過ごしたのか。まずはそこから聞いていくことにした。