ありのままの自分を受け入れる
求めるべき自己肯定感のもう一つの要素である「自己価値」は、ポジティブもネガティブも、ありのままの自分を受け入れた上で、そんな自分に、文字通り自分なりの価値を見つけることです。
たとえば、以下の2つの例は日常の中で感じる自己価値をシンプルに表しています。
・また仕事で遅刻してしまった。気分はヘコんだけど、明日からも頑張ろう。
・ヘコんだ自分に正直になれる自分を誇りに思う。まだまだ必要なスキルも身についていない、成績も悪い。でも、将来のなりたい自分に向かって頑張る自分でいられることがありがたい。
自己価値を感じられないと、うつ病や不安症になってしまうリスクが上がってしまい、また逆に、自己価値を感じている人たちは、幸福感が高く、ストレスにも耐えられる、強い心の持ち主であることがわかっています。
さらに、自己価値を感じていると、勉強の成績や仕事の業績も上がるという報告まであります。
子どもの求めるべき自己肯定感は、「現実の自分をありがたく思う気持ち」です。なぜなら、「自己受容」「自己価値」ともに、子どものメンタルにいいことずくめだからです。
「ナルシシストな子」にしないために気を付けるべきこと
このように求めるべき自己肯定感の解説をすると、しばしば出てくる疑問があります。それは以下のような心配です。
自己肯定感が大事なのはわかったが、いき過ぎると、子どもがナルシシストになってしまうのではないか? ご安心ください。現代の心理学では、ナルシシストと自尊心の高い人は違うとされています。その違いを詳しく説明していきましょう。
まず、ナルシシストは、自分が他人より特別で優れているものであると感じ、それに応じた承認や尊敬を周りから得ようとします。つまり、周りからの褒め言葉や世間でのステータスなどに、外発的報酬に動機づけられているわけです。そうなってしまっては、前述した「外発的やる気」を長期的に持つことによるリスクが上がってしまいます。
一方、「自己受容」と「自己価値」が高い人は、自分が自分であること自体に価値を認めて充足しているわけです。つまり、ナルシシストのように外発的報酬を求めて、他人との比較や優越感によって承認欲求を満たそうとはしていないのです。
他人との比較、周りからの承認に頼り切ってはいけない
だから実際に、ナルシシストの「求めるべき自己肯定感」は低くなりがちで、他人より優越していると感じても、自分に満足していない。
そして、ナルシシストは、人を見下し、横柄な態度を取るので、人間関係があまりうまくいきません。そうなると自分が求めている承認を得ることが難しくなり、その結果、精神的にも不安定になってしまうのです。
こうした比較からわかるように、「求めるべき自己肯定感」と「ナルシシズム」は全く別物なのです。だから、「求めるべき自己肯定感」を高めても、子どもはナルシシストになりません。注意すべき点は、どのように「自己肯定」するかです。