他人との比較による優越感や、周りからのポジティブな承認に頼りきった外発的報酬に基づく肯定感は、長期的には心と体のリスクにつながるだけでなく、ナルシシズムにつながってしまうので、厳重に注意する必要があります。
子供に伝授しておきたい「最強メンタル術」
子どもの「求めるべき自己肯定感」を育てるための方法を紹介していきます。まずは、自分のネガティブな気持ちであっても、うまく受け止めるための重要スキル「ディスタンシング(distancing)」について解説していきます。
これは、自分の気持ちと適切な「距離(ディスタンス)を置く」ためのスキルで、最近の心理学研究でも注目されている心の働きです。
私たちの心は、いったんネガティブに傾きだすとぐいぐいとマイナスの方向に突き進んでしまうことがあります。
たとえば、悲しい失恋をしてしまったとしましょう。ネガティブな悲しみが強いあまりに、ついつい相手のことや、これまでの出来事を思い返してしまう。「ああしていれば」「こうしていれば」と、自分の気持ちや考えを巡らして、悲しさを募らせてしまう。そのせいでさらにくよくよして、ネガティブな気持ちが強くなり、数日、数週間と、長く続いてしまう。
まさにネガティブ思考の悪循環に陥ってしまいました。
でもある時、ふとわれに返る。
なんでこんなにくよくよしているのか?
相手にだって、いろいろな非があった。
それに、これから自分を磨いて、もっといい相手を見つけることができるはずだ。
自分の気持ちと適切な「距離を置く」といい
そんな大失恋とまではいかないものの、似たような気持ちのネガティブループや、そこから「ふとわれに返る」体験というのは誰しも想像に難くありません。
そして、この「ふとわれに返る」というのが、まさに「ディスタンシング」のイメージです。
自分の心がネガティブ思考のループに入ってしまっている。抜け出したい。そんなとき、自分の心を他の誰かのように見立てて、自分を外側からふと見直す。そうやって自分の心と適度な「距離」を置くことで、心のネガティブなスパイラルから抜け出して、より建設的に考えるきっかけになるのです。
実際に、こうしたディスタンシングの心の働きが、感情のバランス維持やメンタル強化、さらには、冷静な判断力や人間関係の改善につながることが確認されています。ネガティブ思考に陥ったとき、それを無理にかき消そうとか、忘れようとしては、逆効果になることは前述の通りです。
ディスタンシングのスキルを身につければ、ネガティブな自分をうまく見つめ直すことができるようになり、それが求めるべき自己肯定感に必要な「自己受容」につながるのです。
ディスタンシングは、まさに子どもに伝授しておきたい最強メンタル術の一つです。