1つ目は、「成功体験」による自己肯定感アップ法。これは、子どもが「できた!」と思えるポジティブな体験をたくさんさせてあげることで、自己肯定感を育もうとするやり方です。
たとえば、勉強やスポーツ、生活、お手伝いなど、なんらかの目標やタスクを設定して、できるところまでサポートしてあげる。できたときにわかりやすく褒めてあげたり、プレゼントやお小遣いをあげたりする。できることがよいことだという意識を刷り込むのがこの方法のカギになります。とてもわかりやすく、説得力もある子育て法で、誰でも使いたくなってしまいそうです。
しかし、こうした「成功体験」ベースの自己肯定感のアップ法には、注意が必要です。なぜなら、こうした自己肯定感の育て方は、子どもの成功体験を強調するがあまり、外発的報酬に頼りがちになってしまうからです。
過剰な「成功体験」は子供の心身に悪影響を及ぼす
前述のように、何かをやってみたときの「できた!」という感覚は、心の三大欲求の一つです。そのため、純粋な達成感を味わわせてあげること自体は、非常に大切です。
しかし、その成功体験をより強く感じてもらおうとして、大げさに褒めてしまったり、お小遣いやプレゼントなど外発的報酬を与えてしまったりすると、子どもの「内発的やる気」が壊れてしまいます。
ここで、厄介なのは、褒め言葉やお小遣いなど外発的報酬を得ることで、実際に子どもがポジティブな気分になり、その瞬間は自分を肯定する気持ちが高まるということです。
しかし、それが落とし穴なのです。なぜなら、外発的報酬に基づく自己肯定感は短期的に強いものの、長期的に依存していると、心にも体にも悪影響を及ぼすからです。
たとえば、うつや不安のリスク、頭痛、肩こりなどの身体的健康に加えて、人間関係にも問題が出てくることが報告されています。ことに子どもは、外発的報酬を求め続けることで、タバコや酒、ドラッグなどに依存してしまうリスクも高まるといわれています。
そのため、「成功体験」の子育てをするならば、意識して大げさな外発的報酬を避けなくてはいけません。褒め言葉やお小遣いで気分が良くなり、自己肯定感が一時的に上がったとしても、長期的には心や体のリスクが上がってしまいます。
子どもが「できる」「できた」と感じられること以上に、喜びの味付けは必要ないどころか、してはいけないと肝に銘じておく必要があります。
ネガティブな気持ちは「忘れる」より「受け入れる」
自己肯定感に関して、もう一つ注意しておくべきことが、ネガティブな気持ちを無理やり抑え込んだり、無理に忘れようとしたりするのは逆効果だということです。
嫌なことが起きたときに、忘れようと試みるものの、どうしても気になる。それどころか、その気持ちを抑え込もうとすればするほど、かえってネガティブな気持ちが強くなってしまいます。結果、嫌なことは忘れようとすればするほど忘れられず、ネガティブな気持ちが続いてしまうのです。