SNSで政権幹部を酷評する「ウクライナ戦争の英雄」

ウクライナ軍の反転攻勢で戦況が重大局面を迎える中、ロシア国内の「台風の目」が、民間軍事会社「ワグネル」の指導者、エブゲニー・プリゴジン氏だ。

ウクライナ東部バフムトに立つロシアの民間軍事会社ワグネル創設者プリゴジン氏とされる画像=2023年5月20日にプリゴジン氏の関連会社コンコルドが通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画より
写真=AFP/時事通信フォト
ウクライナ東部バフムトに立つロシアの民間軍事会社ワグネル創設者プリゴジン氏とされる画像=2023年5月20日にプリゴジン氏の関連会社コンコルドが通信アプリ「テレグラム」に投稿した動画より

ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を「無能」と酷評したり、ウクライナ戦争の「即時終戦」を訴えたり、「もし幸せなジェドゥーシカ(爺さん)が間抜けだったらどうなる」と暗にプーチン大統領を揶揄する発言まで行った。ジェドゥーシカは、クレムリン高官らがプーチン氏を指す隠語だ。

ロシアでは開戦後、軍を侮辱する言動に最長15年の懲役刑を科す刑法改正が導入されたが、プリゴジン氏には適用されない。

ウクライナ戦争で英雄になったプリゴジン氏をめぐっては、「いずれ粛清される」「国防相ポストが目標」「政権内に後ろ盾がいる」といった見方から、「プーチン後継を虎視眈々と狙っている」との説もある。プリゴジン氏の次の一手を探った。

「プリゴジン」の検索回数が「プーチン」の倍以上に

常軌を逸した衝撃発言を連発するプリゴジン氏の注目度は、ロシアで急増している。

独立系メディア「Verstka」によると、ロシアの主要検索サイト、Yandexの5月の検索回数は、「プリゴジン」が49万8000件で、「プーチン」(30万件)の1.65倍に上った。

同メディアがGoogle Trendsで調査したところ、プリゴジン氏の検索頻度は5月28日から1週間に最高の100ポイントに達したのに対し、プーチン大統領は28ポイントだった。

Verstkaは、「国防省との対立激化や感情に訴える動画の発信、頻繁な前線視察で圧倒的な注目を集めた」と分析した。ロシアの要人が危険な前線を訪れることはない。

独立系世論調査機関、レバダ・センターが5月末に公表した「政治家の信頼度調査」では、①プーチン大統領(42%)②ミシュスティン首相(18%)③ラブロフ外相(14%)④ショイグ国防相(11%)に次いで、プリゴジン氏は4%で5位だった。昨年12月の調査では、プリゴジン氏の名前は登場しなかった。

政権に近い政治評論家のセルゲイ・マルコフ氏は「プリゴジンとワグネルは国家の宝だ。欠点もあるが、彼らは勝利の象徴であり、政府はワグネルにもっと資源を回すべきだ」とブログで訴えた。