「ロシア革命が起きる」と不吉な警告
プリゴジン氏の当面最大の標的はショイグ国防相だ。5月の動画では、ワグネル戦士の多くの死体のそばで、「ショイグ、ゲラシモフ」と呼び捨てにし、「お前らは高級クラブに座り、お前らの子どもはユーチューブ動画を撮って人生を楽しんでいる」と批判。「弾薬はどこだ。弾薬の割り当て分を渡せば、死者は5分の1で済んだ」と激しい口調で激高した。
「お前らの子供」とは、ショイグ国防相の次女が婚約者とアラブ首長国連邦の保養地で遊び、動画をユーチューブで発信したことを念頭に置いているとみられる。
6月のインタビューでは、「貧しい家庭の息子たちが前線で次々に死んでいく中、エリートの子弟は戦争を避けようと海外で優雅に過ごしている」「戦死した兵士の何万もの親族の悲しみが沸点に達した時、民衆はすべてが不公平だと言うだろう」と述べた。
5月の投稿では、「エリートが本気でウクライナ戦争に取り組まなければ、1917年と同様の革命が起き、戦争に敗れる可能性がある」と警告した。
富裕層と一般庶民の所得格差が天文学的に広がる中、「階級闘争」に言及した発言の衝撃度は大きい。
ショイグ国防相は一族でビジネスを行っており、その不法取引疑惑や国防予算の流用疑惑がSNSで取りざたされ始めた。
「頭の悪いやつ」とプーチン氏も不快感
プリゴジン氏の暴走はプーチン政権にとって危険で、政権は統制に乗り出した。
ショイグ国防相はワグネルを含むすべての義勇軍部隊に国防省との契約を義務付ける命令書に署名。プリゴジン氏が「国防省とはいかなる契約も結ばない」と反発すると、プーチン大統領は、「契約が志願兵の社会的な保障を確保する手段だ。できるだけ早く結ぶべきだ」と国防省を擁護した。
クレムリンの内部情報に詳しい謎のブロガー「SVR(対外情報庁)将軍」のSNS発信によれば、実力者のパトルシェフ安全保障会議書記が安保会議で、「プリゴジンの行動がエリート層の混乱を招いている」と提起すると、プーチン大統領は、「あいつは頭の悪い奴だ。いつになったら黙るのだ」と同調したという。
政権傘下の国営テレビは、プリゴジン氏の動静を報道しなくなった。6月に同氏をインタビューしたブロガーは、所属するメディア企業を解雇された。
ロシア人実業家は米紙に対し、「彼は危険なゲームをしている。軍への抵抗をやめなければ、(投獄された反政府活動家)ナワリヌイと同じ運命になる」と予測した。