家計の見直しはどこから手をつけたらいいのか。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「老後の生活では、すでに切り詰めるところがないという人が多い。まずは固定費を見直すこと、中でも一番効果的なのは保険の見直しだ」という――。

※本稿は、井戸美枝『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

家計簿と電卓
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老後は「すでに切り詰めるところがない」人が多い

じつは老後の生活は見直しが必要だと思っても、すでに切り詰めるところがない、という人が多いのが現状です。収入が年金のみになると、生活はギリギリ、病気で入院したり介護が必要になったりしたら貯蓄から捻出することになります。

定年後、収入が公的年金などに限られてくると、支出は収入の範囲内で収めるように家計の見直しをすることが大事です。そのときに、支出の内容を把握して、コストカットできるところは今のうちに着手しておきましょう。支出にはおおまかに2種類あります。

• 固定費……住宅ローン、固定資産税、家賃、管理費、生命保険料、通信費(スマホ代)など
• 変動費……食費、水道光熱費など

食費や水道光熱費などの節約術をよく見かけますが、シニア世代がやりすぎると体調を崩すことにもなり、余計な医療費がかかってしまいます。自宅で過ごす時間が増えると食事は大事ですし、年齢を重ねるとそんなにたくさんの量が食べられなくなります。特売品でたくさんの量を買って余らせるよりも、たまには、デパ地下のお総菜を少し買って食べ切る。量より質を求めてもいいと思います。それよりも「固定費」をカットするほうが効果的です。

保険には老後不安につけこむものがたくさん

固定費のなかで一番効果が高いのは「保険」です。すべてカットするのは危険で、加入しておいたほうがいい保険と、シニア世代には必要ない保険があります。

医療保険、死亡保険、自動車保険、火災保険と、自身や家族、世帯単位でたくさんの保険に加入している人が多くいます。保険は、事故が起こった場合、その後の人生を左右する、取り返しがつかない事由には必要です。

書類を洋服ダンスの引き出しにしまい込んで、「今、何の保険に加入しているのかわからない」、という人も多いのではないでしょうか。まずは、「保険証書」を集めてから、これからの人生に必要なのかどうか一つずつ精査していきましょう。