障害年金を受給できれば月約7万円の収入になる

障害年金を請求するためにクリアしたい3つのポイント
① 初診日の証明
② 保険料の納付要件
③ 障害等級表に定める障害の状態にあること

上記3点について、筆者は妹とひとつずつ確認をすることにしました。

「一番目は初診日の証明です。初診日の証明は、原則、病院で書いてもらう書類(受診状況等証明書または診断書)で証明します。お兄さまはこれから初めて病院を受診されるとのことなので、その病院で初診日の証明書を入手することになります」

妹は黙ってうなずきました。

筆者は説明を続けることにしました。

「二番目は保険料の納付要件です。保険料の納付要件をざっくりいうと『初診日の前日時点で、公的年金の未納期間が多すぎないか』というものです。具体的には次の通りです」

原則
初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること。

特例
初診日が令和8年3月末までにあるときは、次の2つの条件に該当すれば、保険料納付要件を満たすものとする

①初診日において65歳未満であること
②初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと

妹からの聞き取りによると「兄は36歳で仕事を一切しなくなってから現在まで、父親が国民年金の保険料を支払ってきた」とのことでした。それであれば、少なくとも特例の方で保険料の納付要件はクリアできることになります。

三番目は障害等級表に定める障害の状態にあることの確認です。

「障害年金は、原則、初診日から1年6カ月たった時に請求できます。この1年6カ月たった日を障害認定日といいます。この障害認定日に、障害等級表に定める障害の状態にあることが重要です。精神疾患の場合、医師の書く診断書と本人または代理人が書く病歴就労状況等申立書(日常生活の様子を記載する書類)の内容で、障害年金の受給の可否が判断されます」

「なるほど。診断書と病歴就労状況等申立書が大事なのですね」

筆者は、最後に障害年金の金額についても説明することにしました。

「初診日に加入していた公的年金は国民年金になるので、障害基礎年金を請求することになります。障害基礎年金は1級と2級があり、より障害状態が重い方が1級となります。仮に障害基礎年金の2級に該当した場合、金額は月約7万円、年約84万円になります」

障害基礎年金2級 月額 6万6250円
障害年金生活者支援給付金 月額5140円
合計 7万1390円

筆者は合計金額の所に指で丸を描きました

「親御さんと同居している間、障害年金約7万円のうち6万円を貯蓄していったとします。仮に、父親が93歳、母親が90歳、ご本人が61歳になる15年後まで貯蓄できたとすると、月6万円×12カ月×15年=1080万円になります。このお金とご両親が残したお金を合わせれば、親亡き後の生活費も何とかなるかもしれません」

「月約7万円の収入は大きいですよね。兄と両親に金額の話も伝えようと思います」

「何はともあれ、まずはお兄さまが病院を受診するところから始めなければなりません。通院は月に1回程度で構いませんので、定期的に続けるようにしてもらってください。初診日から1年6カ月過ぎた日に障害年金が請求できますから、その2カ月くらい前から書類の準備をしていきましょう。もしよろしければ私もお手伝いいたします」

「それはとても助かります。大変心強いです」

妹はほっとした表情になりました。