このニュースの価値に気づいた海外メディア

一体どういうことか順を追って説明していこう。まず、今回の問題がなぜ再度、炎上すると考えるのかというと、「海外メディア」「組織ぐるみ疑惑」「テレビのスポンサー企業」という3つの大きなリスクを抱えているからだ。

まず、最初の「海外メディア」についてだ。ご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、実は今回の性加害報道の火付け役はイギリスのBBCだ。

3月にBBCでは「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル Predator: The Secret Scandal of J-Pop」というドキュメンタリーを放映して、世界的にも非常に大きな反響があった。実際、会見を催した男性も、この番組を見て告発を決意したという。

記者会見を撮影するカメラ
写真=iStock.com/microgen
※写真はイメージです

これだけ反響が大きいとなると、BBCとしては当然、「続編」を制作する。また、テレビ局のような「ジャニーズタブー」のないネットフリックスやアマゾンなど海外動画配信サービスも、コンテンツとしての価値に気づいたので、同様のドキュメンタリーを制作する可能性もある。

日本のマスコミは海外メディアを後追いする

このように「海外メディア」が疑惑を「追撃」するようになると、日本国内のメディアも無視できずに「後追い」に走る。悲しいかな、島国根性丸出しの日本人は、欧米人から問題視されると迎合して、慌てて騒ぎ出すということが、これまで何度も繰り返されてきた。

古くさかのぼれば、田中角栄の金脈問題がある。1974年、月刊『文藝春秋』に立花隆氏の記事「田中角栄研究――その金脈と人脈」が公表されたが、国内マスコミはほぼノーリアクション。しかし、それを外国メディアが後追いして、田中首相に厳しい質問を投げかけて大きく取り扱ってから、テレビや新聞もくっついてきた。

2011年に発覚したオリンパス事件もわかりやすい。月刊誌『FACTA』が調査報道でオリンパスの不正を明らかにしたもので海外ではテレビで速報が流れるほど大きく報じられたが、日本のマスコミはスルー。海外メディアの勢いに押される形で「後追い」をした。

この構造は令和になった現代も何も変わっていない。先日も米・イェール大学助教の成田悠輔氏の“高齢者の集団自決”発言が問題になったが、実はあれも当初はネットメディアやSNSで問題視されていたが、マスコミはスルーしていた。それが「NYタイムズ」が批判した途端に大騒ぎになったのである。

つまり、日本における「報道の自由」というのは、「雑誌やネットが不正や問題を指摘→テレビ・新聞は無視→海外メディアが報道→テレビ・新聞が慌てて後追い」というスタイルが基本なのだ。