テレビ局のスルー作戦が終わるきっかけ

BBCの続報や、他の海外メディアがこの問題を引き続き追及する場合、同じような告発者の証言を再び並べてもしょうがない。ジャニーズ事務所にも性加害があったという事実は認めさせた。となると、次は事務所側が主張している「個人犯罪」というストーリーをどう崩していくのか、だろう。

具体的には、事務所側がいかにしてジャニー喜多川氏の性加害を黙認して、サポートして、さらに被害者たちに「アイドルデビューするためにはこれに耐えるのが当然であって、先輩たちもみんなそうしてきた」と諭してこの「犯行」の隠蔽いんぺいを手伝ってきたのか、ということを取材で浮かび上がらせていくのだ。

もしこのような形で海外を中心に「組織ぐるみ疑惑」が持ち上がると、日本のテレビ局もさすがに今のような「事実関係がわからないのでスルーします」というスタンスは続けられない。なぜかというと、3つ目のリスクである「テレビのスポンサー企業」が黙っていないからだ。

グローバル企業は日本企業よりも性犯罪に敏感

今回の問題が、日本よりも海外の方で反響があったことからもわかるように、未成年者への性加害や、権力者によるグルーミング(わいせつ目的で相手を手なずける、懐柔行為)などの性犯罪は、日本よりも欧米社会の方が厳しく糾弾される。

例えば、ハリウッドのプロデューサーなどは、女優に対しておこなったグルーミングやセクハラがたとえ数十年前の行為であっても問題視され、業界から「永久追放」されている。一方で、日本では映画監督や役者が同様のことをやっても一定の擁護論が出るし、時間が経過すれば「復帰」もできる。

このように「性犯罪」に厳しい欧米社会の常識では、この卑劣な犯行を長年、組織ぐるみでおこなってきた企業が、社会的責任を有する大企業と関係と持つことなどあり得ない。

「テレビCMに出稿する大企業」の中には、そのような欧米社会で顧客や株主をもつグローバル企業も少なくない。つまり、このような企業に対して、「創設者の性加害を容認、手伝ってきた事務所のタレントをCMに起用するとは何事だ」という圧力がかかる恐れもあるのだ。