テレビ局も「ジャニーズ切り」せざるを得ない

こういう事態になったら、そのグローバル企業としてはまずは電通や博報堂といった大手広告代理店を呼びつけて、「どうなっているんだ! テレビも新聞も騒がないからこのまま鎮火をするって話じゃなかったのか」と文句を言うだろう。

しかし、「スポンサータブー」を持ち出せば、ある程度「自粛」をしてくれる日本のテレビや新聞と違って、海外メディアにはそういう忖度そんたくは一切ないので、大手広告代理店としても打つ手がない。

そうなると、そのグローバル企業はどうするのかというと、ジャニーズタレント出演のCMの放映中止と今後も起用しません、という宣言をするのだ。こうなると、テレビ局としても「ジャニーズ切り」に動かざるを得ない。

ミニチュアのテレビに手を伸ばす人
写真=iStock.com/bee32
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このパターンは、『週刊新潮』で銀座ホステスへの性加害報道が出た香川照之さんのケースがわかりやすいだろう。

トヨタのちゃぶ台返しで情勢が変わった

忘れてしまった人も多いだろうが当初、テレビ局の間ではこの問題は、香川さんが謝罪・反省することで「一件落着」という方針で進んでいた。実際、報道が出た後にもかかわらず、香川さんはTBSの報道番組に出て謝罪してそのまま出演していた。この時点でテレビ業界では、人気俳優のホステスへの性加害は、「失言」程度のリスクだったのだ。

しかし、あるグローバル企業の判断によってこれがちゃぶ台返しでひっくり返される。そう、報道から1週間後、国内外の世論の反応を分析していたトヨタ自動車が、香川さん起用のCMの全停止を発表、過去のコンテンツも閲覧できなくさせたのである。

ご存じのように、同社は「トヨタタブー」なんて言葉もあるように、日本の広告ビジネスにおけるキャスティングボードをがっちり握っている大スポンサーだ。トヨタが明確に「ノー」と言っているタレントをCMに起用する企業も広告代理店など存在しない。そうなると当然、スポンサーさまさまのテレビ局もこれに追随しないわけにはいかない。

かくして、香川さんはテレビ界から「追放」になった。罪の重さでこうなったのならば、報道が出た直後にこうなっていなければおかしいが、一度は「不問」になりかけたのにこうなったというのは、「大スポンサーの逆鱗げきりんに触れた」以外に理由はない。

これとまったく同じことが、今回の問題でも繰り返される可能性はある。