すべてを3時間前に片付ける人、窓口に立つ支店長…

あるときふと彼の腕時計をみたら、針が3時間進んでいたので、驚いて理由を尋ねたら、すべてのことを3時間前に片付けているのだという。確かに彼の仕事は漏れもなく、非常にきっちりしていたので、信頼できた(アポイントメントなどは実際の時間で管理していて、間違えることはなかった)。

大手米銀バンカース・トラストの協調融資部門のmanaging director(部長級)だったドワイヤーという名の米国人男性は、仕事のスケジュール用のノートに毎週日曜日のオペラのチケットを挟んでいて、毎週土曜日に出勤して黙々と事務を処理し、日曜日にオペラに行くのを習慣にしていた。

国内でも、筆者が勤務した邦銀に長谷川さんという、必ず業績を上げる取締役支店長がいた。彼は勝手に「1日支店長」という制度をつくり、本来窓口係や為替係である若い女性を支店長の席に座らせ、自分はその間窓口係や為替係をやっていた。

彼が何をしていたかというと、現場の無駄をみつけ、それを改善することで、営業を底上げしようとしていたのだ(たまに本店から頭取が電話してきて、支店長席に座った窓口係の若い女性があわてふためき、「し、支店長さん、とっ、頭取からお電話です!」と叫ぶと、「今日はあなたが支店長だから、あなたが答えなさい」といって札を数えたりしていたらしい)。

ジンバブエの首都ハラレで、ANZグリンレイズ銀行幹部とランチをする筆者
写真=筆者
ジンバブエの首都ハラレで、ANZグリンレイズ銀行幹部とランチをする筆者

仕事がデキる人はみんな、たっぷり睡眠をとる

インベストメントバンカーは「熊の尻を噛みちぎる(bite the ass off a bear)」勢いで目覚め、その勢いで出社して、ガンガン仕事をしなくてはならないといわれる。わたしも国際金融マン時代は毎朝、熊の尻を噛みちぎる覚悟で出勤し、中近東・アフリカというリスクの高い地域を担当していたので、「メイク・アンバンカブルズ・バンカブル!(銀行取引に適しないものを適するように変える!)」と両手の拳を握りしめていた。そうしないと、生き馬の目を抜く国際金融市場で、いいディールはもぎ取れない。

あまり知られていないが、これをできるようにするには、毎日十分な睡眠をとることが必要だ。よく日曜の夜遅くまで遊んだり、出かけたりして、月曜日に疲れのたまった状態で出社し、何とか根性でその日をやり過ごそうとする人たちをみかけるが、そんな状態ではエネルギーも集中力もなく、「熊の尻を噛みちぎる」ことはできない。インベストメントバンカーに限らず、どの業界でもできる人たちは(案件が切羽つまったときは例外だが)、普段から十分な睡眠をとるように心がけている。