点検やチェックなどの仕事は非常に向いている

ASDの人のなかには、一瞬にして細部にわたる視覚情報を確実に獲得できる能力をもっている人もおり、点検やチェックなどの仕事は非常に向いているといえます。細かいピースのジグソーパズルをあっという間に完成させてしまう能力を持ち合わせている人もいます。それだけ、空間認知能力もすぐれているということでしょう。

ASDの特性のひとつとして、絵画や美術の能力が秀でていることがあげられ、実際にアーティストとして活躍している人も少なくありません。人並み外れた視覚能力を生かして、一般の人では発想し得ないような世界観を創りあげ、独自の芸術活動を展開することができる人もいます。

なお、ASDの人のなかには、音楽的才能が並外れている人もいます。私の患者さんの一人は、大きな音楽コンクールのピアノ部門で、いきなり優勝してしまいました。彼らがもつ認知能力は、凡人である私たちには未知の領域といえるのかもしれません。

ざわついた環境が耐えられない

特性⑧理解されづらい感覚過敏がある

ASDの代表的な特性のひとつに感覚過敏があります。感覚過敏とは、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などが過度に敏感であるために、日常生活に支障をきたすような状態をいいます。たとえば、人混みで聞こえるざわざわした話し声が耐えられないという人がいます。

感覚過敏のなかでも特に、突然鳴る大きな音を嫌う人が多いことが知られています。救急車のサイレンや犬の吠える声、赤ちゃんの泣き声、雷や花火も苦手です。こうした音が突然聞こえてくると、子どもではパニックになってしまうケースもあります。

耳をふさぐ少年
写真=iStock.com/Jatuporn Tansirimas
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感覚過敏があり、苦手な音を避けるために耳栓をして生活している人もいます。職場などでも、仕事上の支障があまりないのであれば、そうした対応を許容することも適切な配慮になります。

また、音に敏感なASDの人に注意や指導をする際には、大きな声で怒鳴ったり、感情的に怒りをぶつけたりしないように気をつける必要があります。注意をするときには、冷静な口調で言うほうが無難です。