サラリーマンは国家に収入をすべて捕捉され、逃げ場のない、がんじがらめの「隷属」状態だ。ところが世の中には“制度の穴”を上手に利用している人たちがいる。『新・貧乏はお金持ち』を刊行した作家の橘玲さんは「個人と法人という“2つの人格”を使い分けると、税・社会保険料コストの大幅削減をはじめとする不思議なことが次々起こる」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、橘玲『新・貧乏はお金持ち』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

資本主義は欲望でお金を増殖させるシステム

リーマンショック(2008年)でアメリカの金融機関がばたばたとつぶれたとき、「グローバル資本主義の終わり」だといわれたけれど、好むと好まざるとにかかわらず、わたしたちは資本主義と市場経済の中で生きていかなくてはならない。人類はこれ以外の経済制度を持っていないし、これからも(少なくとも生きているあいだは)ずっとそうだからだ。

市場経済というのは、「お金」という共通の尺度でモノとモノとをやりとりする仕組みのことだ。資本主義は、「もっとゆたかになりたい」という人間の欲望によってお金を自己増殖させるシステムだ。

このふたつが合体した経済世界でわたしたちがお金を獲得する方法は、つまるところたったひとつしかない。

資本を市場に投資し、リスクを取ってリターンを得る

これだけだ。

給料袋
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働く能力=人的資本を投資して給料というリターンを得る

働く能力を経済学では「人的資本」という。若いときはみんな、自分の人的資本(労働力)を労働市場に投資して、給料というリターンを得ている。

人的資本は要するに「稼ぐ力」のことだから、知識や経験、技術、資格などによって一人ひとりちがう。大きな人的資本を持っているひとはたくさん稼げるし、人的資本を少ししか持っていないひとは貧しい暮らしで我慢しなくてはならない(これはあくまでも統計的な結果で、人的資本と収入が一対一で対応しているわけではない)。

働いて得た給料から食費や家賃などの生活経費を支払って、いくらかのお金が手元に残ったとしよう。そうすると、このお金を資本金にして、資本市場に投資してお金を増やすことができる。

もっとも一般的な投資が「貯金」で、これは銀行などにお金を貸して利息を得ることだ。貯金は元本の返済が約束されていて、おまけに日本国の保証までついているから、リスクが低いかわりにリターン(金利)も低い。

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