フリーエージェントが法人化した「マイクロ法人」

会社に雇われない生き方を選択したひとたちを「フリーエージェント」という。1980年代以降、欧米など先進諸国で増えつづける新しい就業形態で、このフリーエージェントが法人化したものがマイクロ法人だ。

橘玲『新・貧乏はお金持ち』(プレジデント社)
橘玲『新・貧乏はお金持ち』(プレジデント社)

本書の親本(『貧乏はお金持ち』)を刊行した2009年当時、アメリカでは全就業者の4分の1、約3300万人がフリーエージェントで、1300万社のマイクロ法人があり、11秒に1社の割合で自宅ベースのミニ会社が生まれていた。

アメリカでは会社に雇われない生き方が一般化すると同時に、フリーエージェントのマイクロ法人化が進んでいる。彼らは別に、第2のマイクロソフトやグーグルを目指しているわけではない。会社に所属するのではなく自分自身が会社になるのは、そのほうが圧倒的に有利だからだ。

会社をつくることによって、個人とは異なるもうひとつの人格(法人格)が手に入る。そうすると、不思議なことが次々と起こるようになる。

詳しくは本書を読んでほしいのだが、まず収入に対する税・社会保険料のコストが大幅に低くなる。さらには、まとまった資金を無税で運用できるようになる。そのうえもっと驚くことに、多額のお金をただ同然の利息で、それも無担保で借りることができる。

存在しないはずの「フリーランチ」があった

こうした法外な収益機会は、本来、自由で効率的な市場ではありえないはずのものだ(経済学の大原則は、「市場にはフリーランチ=ただ飯はない」だ)。ところが実際には、別の人格を持っただけで、簡単にフリーランチにありつくことができる。

こうした奇妙な出来事は、国家が市場に介入することから生じる。世界大不況で「市場の失敗」が喧伝されたが、じつはそれ以前に、国家が市場を大きく歪めている。その最大のものは世界中の国家が好き勝手に貨幣を発行していることなのだが、それ以外にも市場には無数の制度的な歪みがあって、それによって理論上は存在しない異常現象が現実化するのだ。

フリーエージェントがマイクロ法人になるのは、国家の歪みを最大化するためだ。それをひとことでいうならば、

マイクロ法人は、国家を利用して富を生み出す道具

なのである。