人的資本と金融資本

それで満足できないなら、「株式」に投資することもできる。

こちらはずっと高い配当をもらうことができるけれど、元本が保証されているわけではないから、株価が大きく値下がりしたり、場合によっては紙くずになってしまうこともある。そのかわり大儲けする可能性もあるから、これはハイリスク・ハイリターンだ。

このようにわたしたちは、人的資本を労働市場に投資したり、金融資本(手持ちのお金)を資本市場(金融市場や不動産市場)に投資したりして、生きていくための糧を得ている。若いときは人的資本で稼いで、年を取って働けなくなると金融資本と年金で生活する、というのが一般的なパターンだ。

人的資本理論では高い教育を得たひとほど人的資本が大きいとされるから、「高学歴=高収入」という法則が生まれ、高い学費を払ってMBA(経営学修士)などの資格を取得することが流行した。速読術や情報収集法、セルフマネジメントやコーチング、そういったもろもろの自己啓発術も、人的資本を高めてより多くの収入を得ようという戦略だ。

ほとんどのひとが敗者になる「自己啓発戦略」

ところでこのたび著わした『新・貧乏はお金持ち』では、こういう話はいっさい出てこない。

書店に行けば玉石混交の自己啓発本が溢れていて、それに新たになにかを加えることなどとてもできそうにない。

それともうひとつ、私自身が「自己啓発」という戦略にいまひとつ納得できないということもある。簡単にいうと、みんなが同じ目標を目指せば少数の勝者と大多数の敗者が生まれるのは避けられず、ほとんどのひとが敗者になってしまうのだ。

*「やればできる」という自己啓発の思想については、「やってもできない」という立場から、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』(幻冬舎文庫)で批判的に検討した。

そこでこの本では、お金と世の中の関係を徹底して考えてみたい。なぜそんなことをするのかって? 自分が生きている世界の詳細な地図を手に入れることができれば、自己啓発なんかしなくても、ほかのひとより有利な場所に立つことができるからだ。