※本稿は、加藤進昌『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
そういえばこんな人どこかで見たかも…
発達障害の人の多くは、人との関わり方の困難さ、変化への適応のしにくさがあり、他人からどう見えるかには無頓着で、ソーシャルスキルのつたなさがあるものの、知能や学力は高く、真面目で実直な性格が見て取れます。
もしかしたら、「学校にこういうタイプの子がいた」「会社の新入社員に似たような人がいる」と思い当たる人もいるかもしれません。ASDの人、あるいは診断がつかないとしてもその傾向のある人は、社会に少なからず存在しています。
ここでは、(ASDの当事者ではない)私たちから見た、ASDの代表的な特性を紹介します。ASDの人たちが、どのような場面でどんなつまずきを生じやすいのかという理解につなげてほしいと思います。
ASDには8つの特性がある
特性①他人への関心が薄い
子どもがASDかどうかを見極めるときに、医師が親によく尋ねる質問が「お子さんと目が合いますか?」「お母さんに愛着を示しますか?」というものです。ASDの子どもは、赤ちゃんのときから親と目を合わせなかったり、名前を呼ばれても振り向かなかったり、親に甘えなかったりといった特徴がみられます。その基本的な特性は、大人になっても変わりません。大人のASDの人のなかには、人と目が合うと、すぐに目をそらしてしまう人もいます。
ただし、それは「人嫌い」というのとは少し違います。“他人(自分以外の人)への関心が薄い”という言い方が合っているかもしれません。他人に無関心で、自分から積極的にコミュニケーションをとろうとしないのです。他人と親しくなるつもりがないわけですから、コミュニケーションをとる必要性も感じていないということでしょう。