“変わらない”ことが最大の安心材料
特性④こだわりが強く、変化を嫌う
ASDの代表的な特性のひとつに、こだわりの強さがあげられます。自分で決めたルールやルーティンへのこだわりが強く、それを臨機応変に変えることができません。仕事では、手順通りにやることに神経をつかいすぎ、作業のほうがおろそかになってしまう場合もあります。また、場所や物の配置などにもこだわるため、作業机の位置がいつもと違ったり、道具の置き方が整然としていなかったりしただけで、仕事に集中できなくなります。
ASDの人にとっては、ルーティンが決まっているほうが安心して過ごせるので、毎日判で押したように同じ仕事を繰り返し続ける環境が理想的です。毎日違った仕事場に行かなければならなかったり、作業内容がコロコロ変わったりする状況は、ASDの人にはストレスになります。“変わらない”ということが最大の安心材料なのです。
しかし、職場においても学校においても、予定変更はつきものです。突然のスケジュール変更や作業の中断、担当の変更、配置換えなどは、ASDの人を極度に緊張させます。冷静になれなくなり、時にはパニックになってしまうこともあります。ASDの人には変更や変化の少ない仕事を担当してもらうようにし、それでも変更が生じてしまう場合は、前もって変更が生じることを知らせることで、緊張を少し抑制させることができます。
ASDの人には「鉄道好き」が多い
ASDの人のこだわりは「常同性への固執」といわれますが、なぜ、そういう特性があるのかはよくわかっていません。当人に尋ねてみても、はっきりした返答は得られません。おそらく、それが彼らにとって“当たり前”だからなのではないでしょうか。
理由を推測すると、ASDの人は外界(自分の外側の世界)の変化についていくために、定型発達の人と比べ、はるかに多大な努力を要しており、日々の生活を送るだけでも疲れてしまうことが考えられます。もし、外界が“固定”されている状況であれば、彼らは安心できるのでしょう。
ASDの人のなかに、いつも同じ鉄路を同じ時刻に走る鉄道が好きな人が多いのはそのためです。また、カラオケで歌うのは昭和歌謡に限るという人もいます。過去の歴史は絶対に変わることがないので、流行がめまぐるしく変わる現代の音楽よりも、昭和歌謡のほうが安心感を与えてくれるということではないでしょうか。