手順通りにスピーディーにこなすことができる
ASDの人はルールやマニュアルに忠実に従って、黙々と物事に取り組むことは得意なので、そうした配慮があれば、ミスなくスピーディに仕事をこなしてくれるに違いありません。世の中にはそういう作業が苦手な人もいますから、適材適所でASDの人を配置すれば、高い成果を期待することができます。
こうした点は、ASDの人にとって理想的な教科書は“取扱説明書”だといえます。商品を製造したメーカーは、消費者が間違った使い方をしてしまうことで事故やトラブルにならないように、煩雑になることは承知のうえで、味も素っ気もない文章で、すべての手順を図解入りで事細かに示した取扱説明書を添付します。定型発達の人からすると、全部読み通すのはかなり億劫なものですが、ASDの人は最初から最後まで苦もなく読み通し、手順を正しく理解することができるので、間違った使用方法をする心配がありません。
このように、世の中の多数の人が苦手なことを、逆に得意としているのですから、そうした能力を社会で生かさない手はないと思います。
聴覚よりも視覚優位の傾向がある
特性⑦口頭で言うよりも文字情報のほうが伝わりやすい
ASDの人は、聴覚よりも視覚優位の傾向があるといわれています。音で聞いた情報のキャッチは苦手ですが、文字で示された情報を獲得し、記憶する能力は非常にすぐれています。
ASDの人の場合、電話など口頭で約束したことは忘れてしまいやすいので、大事な用件はメールでやりとりしたほうがよいといえます。メールは保存しておけば、いつでも内容を確認できるので、ASDの人には好都合です。さらに、リマインダーなどに紐づけて、約束の時刻が近づいたらアラームで知らせるツールも活用するとよいでしょう。
伝言なども、口頭で伝えるのではなく、メモに書いて渡すほうが、確実に情報が伝わります。指示や伝達事項も口頭ではなく、紙に書いたり、印字したりしたものを手渡すことが有効だといえます。
なぜ、耳で聞き取る情報に比べて、目で見て得る情報のほうがキャッチ力が高いのか、そのしくみは明らかにはなっていませんが、ASDの人が視覚情報を獲得する方法は、大雑把に全体をつかみ取るのではなく、隅から隅まで細部に至るまで網羅的に把握するのが特徴的です。ですから、見落としはあり得ませんし、忘れることもめったにありません。