木が育つまでに40年

それに木を育てるのには時間がかかります。例えば、伐採するまでに40年かかるとすると、その40倍の土地がないと維持できません。

1年に1区画だけ伐採したら、そこにまた苗木を植えて、翌年には次の1区画の木を切る。そして切ったところにまた苗木を植えるわけですが、それが木材に育つまでに40年かかります。

でも40年の木でもまだ十分育ったとは言えません。一番使いやすいのは、60〜80年ぐらいの木だといわれています。それでも最近はいろんな技術ができてきて、40年ぐらいでも使えるようになってきたのです。

その技術の1つにCLT(Cross Laminated Timber)という合成材の一種があります。一枚板は横には強いけど、縦には弱い。そこで板を張り付けて合成し、縦にも強い板をつくるわけです。スウェーデンでは、この合成材で4階建てや5階建てのビルを建てています。

日本でも最近は木造のビルを建てられるようになりましたが、それを止めていたのは消防法です。木は燃えやすいからダメだというわけです。

日本の林業の裏事情

こういう風に、森林を守るには森林だけでなく、建材をつくる技術から法律まで変えていかないといけません。それこそ、川上から川下まで全部整備しなければなりません。いくら木を植えても、最終的に木材が売れなければしょうがありません。そこまで考えていかないと、森林は守れないのです。

さらに、前述の島根県と広島県のように、自治体によっても異なります。広島のあたりは大都会でいろんな産業がありますが、島根県は過疎ですから第一次産業のウェートが高いのです。

日本の林業については裏もあって、今は基本的にパルプ材の需要が多いから、木をぜんぶ切ってしまう自治体があります。そうすると、今度は山が荒れて、土砂崩れが起こったりするわけです。

もう1つ、日本人に花粉症が急増したのは、杉の植林に国が補助金を出したからです。補助金が欲しいから、貧しい地域では杉をたくさん植えました。四国はその典型で、高知県は人工林が8割くらいですが、そのほとんどが杉です。