「一億総窓口負担ゼロ」はその気になればできる
たしかに医療資源すなわち財源は無限ではない。しかし窓口負担分にかかるカネはそんなに莫大なものであろうか。厚生労働省の2020年「国民医療費の概況」によれば、国民医療費約43兆円のうち患者等負担分は約5兆円だ。
これは岸田政権が目指す防衛費倍増計画のうち、2023年度予算の防衛費とほぼ同規模、つまりその気になれば工面できる金額なのだ。もちろんそのすべてを国に求める必要はない。紙幅も限られているので詳細を知りたい方は以下のサイト(※2)をご覧いただきたいが、その財源は国と事業主とでのワリカンでも解決し得るのだ。
※2:医療費の窓口負担「ゼロの会」
つまり「一億総窓口負担ゼロ」は、まったくの夢物語ではないということだ。事実、窓口負担ゼロを実現させようという声は、患者団体だけでなく、今や著名人からも上げられてきている。国民にとっての優先順位が何かを理解し、“その気になれる政権”であれば、今すぐにでも実行できるレベルの政策といえるだろう。
これを機に国民的議論を始めてはどうか
窓口負担ゼロのメリットは、受診控えがなくなるというだけではない。医療機関における金銭の授受が削減されることから、未収金回収や窓口でのトラブルといった受付業務の負担軽減にもつながる。一方、デメリットとしては、自らの懐に痛みの実感がわかないことから、不要不急の受診を誘発し医療費を高騰させるのではないかとの指摘もあろうが、それは現場の医療提供サイドが不要な検査や治療を行わなければ良い話である。
第一、窓口負担が無料の国で、用のない人が医療機関に殺到して医療崩壊を引き起こしているなどという話もまったく聞かない。むしろ、窓口負担を課すことによる受診抑制のほうが、手遅れの人を増やし、医療機関に余計な負荷をかけ、さらに結果として医療費の増大を招くことにつながるだろう。
今回の「5類化」とそれにともなって政府から示された「医療費の窓口自己負担増の再開政策」を奇貨として、これまで多くの人が知らず知らずのうちに実現できるはずないと思いこまされてきた「窓口負担ゼロ政策」について、真剣かつ具体的に国民的議論を開始してはいかがだろうか。