今後は診療報酬分+検査費用も負担に

医療機関の機能によっても若干異なる場合があるが、ある診療所で例えれば、「初診でコロナPCR検査、処方箋発行」を行った場合、診療報酬点数上はトータル1762点(10割負担で1万7620円)。現行ではこれらのうち、検査に関係する部分である850点(同8500円)が公費、すなわち残りの912点(同9120円)分は保険診療として、自己負担割合に応じた窓口負担が請求される。つまりこの場合、3割負担の人であれば、現行でも2736円の支払いとなっている。

「5類化」後は、これにさらに検査にかかる費用の自己負担分が上乗せされる(※1)となれば、「無理……払えない」という声、軽症者が受診しなくなることで感染が広がるとの懸念は容易に理解されるだろう。いや、軽症者でなくとも、この窓口負担を支払えない人は、検査を控え受診を我慢し、自宅で重症化するまで、あるいは死亡するまで発見されないという事態さえ引き起こしかねないともいえよう。

※1:診療報酬点数トータル1762点(10割負担で1万7620円)の内訳は、院内トリアージ実施料300点(新型コロナの疑い患者について、必要な感染予防策を講じた上で実施される外来診療を評価するもの)と診療・検査医療機関への上乗せ加算147点(発熱外来設置を評価するもの)が含まれているが、これらは「5類化」に向けて順次算定されなくなることが予想される(現在、中医協で議論中)。よって、912点にそのまま検査点数が上乗せ加算されることはないと考えられる。

医療機関が公費で大儲けしたと感じる人も

では、窓口負担増を歓迎している人は、いったい何に期待しているのだろうか。これらの意見を見渡すと、まず「コロナを特別扱いしなくなる」ことを第一に歓迎しているようだ。「コロナはカゼ」「そもそもコロナなど存在しない病気」「コロナはPCR検査が作り出したもの」といった非科学的な意見さえも散見される。

そこから「コロナは特別な病気ではないのだから、公費を投入することは間違いである」という意見につながっていくようだ。また一部の病院が病床確保料を不正に受給していたことを非難しつつ、コロナ禍によって医療機関が公費で大もうけしたと感じている人もいるらしい。窓口負担増によって「医療機関が検査で儲けられなくなる」「税金のムダ使いがなくなる」という意見の背景には、自己負担増に対する不満以上に、医療機関への不信感と怒りが存在しているのかもしれない。

しかし冷静に考えてみれば、窓口負担増によってダメージを被るのは医療機関ではないことは明白だ。いや被害を受けるのは、医療機関のユーザーである患者さん自身だ。とくに低所得者ほど、その打撃は大きいものとなる。