最後の戦犯は、やはり主人公・暢子

残念ながら、主人公・暢子もA級戦犯と言わざるをえない。前述したように、朝ドラとは、自由奔放ではちゃめちゃな主人公が、夢に向かって成長する姿に変わっていくのが醍醐味だ。他人に対しての思いやりや礼儀や夢をかなえるための強い気持ち、大人の女性としての人間的な魅力など、これらの美質を半年間の間にぎゅっと凝縮することが大前提。それでこそ朝ドラヒロインだが、今のままの暢子では、朝ドラヒロイン失格と言わざるをえない。

例えば、母と再婚の噂がある知人に向かって、日頃の感謝の意も示さず「再婚するつもりがあるのか?」と詰め寄る。名文化人も集うイタリア料理店でイタリアの勉強を全くしない。さらに和彦のことが内心では好きなはずなのに彼の気持ちをあっさり拒否する(しかし後に翻意して結ばれる)。

その迷走ぶりに視聴者が「暢子はいったいどうしたいの?」と謎は深まるばかりだ。

ソーキそば
写真=iStock.com/leungchopan
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暢子、にいにい、和彦の成長につながる「まっとうな人々」

ここまで作品のネガティブな面を述べてきたが、もちろん、どんな作品(現状では)にも、キラリと光る部分はある。

戦犯キャラのアクが強すぎてかき消されそうになったが、秀逸なキャラクターはたくさんいるのだ。ところが、前出・戦犯3人の前であえなく討ち死に、あるいは遠くに行ってしまったかのようだ。

いい味を出していたと筆者が思うのは、

・「民俗学とはふるさとの思い出を重ねていく勉強です」と教え諭す和彦の父である民俗学者
・人見知りで病弱な比嘉家の末っ子・歌子の才能を見いだし導く音楽教師
・和彦の気持ちを酌み取ってパリに旅立った婚約者
・暢子の姉・良子に恋い焦がれていたのに男らしく身を引いたボンボン

至極まっとうな人々で、視聴者にも受け入れられた感がある。彼ら彼女たちの思いが、ヒロイン暢子と彼女を取り巻く人物たちの成長に今後どこかでつながらないかと期待するばかりである。

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