部活を辞めてもその時間を自由時間に当ててしまう
サンプルとしては少ないかもしれませんが、岐阜県一番の進学校である岐阜高校と、私の母校であり、2023年より校長を務める高知県・土佐高校でヒアリング調査をした結果、勉強のために部活を辞めて、成績が上がった生徒は全体の1割でした。
また東大野球部員140名にアンケートを取ったところ、高校3年生のギリギリまで部活を続け、引退後は時間を勉強に割いた子ほど現役合格しています。つまり、同じ時間があってもどう使うかによります。時間ができても「自由時間」にあてるようでは、望んだ結果は出ないということです。
また、高3の夏の引退前に部活を辞めた子どもたちのうち、成績が伸びた1割の子どもたちの共通点は、偶然にもすべてお医者さんの子女でした。ここから見えることは、途中に辞めたとしても、明確な目的・目標があれば、勉強のモチベーションは保たれて、時間も勉強時間に割り振られるということかもしれません(少ないサンプルですので、想像ですが)。
人はどうしてもサボりがちですから、単純に時間を確保したいという感覚で、部活を辞めたとしても、多くのケースでゲームや遊びで時間を消費してしまうのが、関の山かと思います。
それであるなら、高校3年の夏まで全力で部活に邁進して、引退後にメリハリをつけて受験に臨むことです。毎日練習があると、限られた時間をムダにしないようにと、電車の中で単語帳を開く、時間の使い方も上手になります。こうした経験のほうが社会に出ても活きるでしょう。
何より、3年間(中学時代も含めたらそれ以上)、部活動で努力をした子は、勉強にシフトとするとグンと成績が伸びます。「部活をやり切った」という感覚がやる気のスイッチになるのでしょう。
モチベーションは成績を上げる
図表2は東大野球部員の高校時代の模擬試験の成績推移のグラフです。丸の大きさは模試を受けた人数を表しています。部活をやっているときは模試を受けていない生徒が多いため、丸が全体的に小さくなっています。高3夏から秋にかけて、模試の結果が急激で伸びていることが読み取れるでしょう。
なぜ、急激に伸びるのか? それは、東大に合格したいという強いモチベーションがあるからです。「先輩も逆転合格できたから」「東大ならレギュラーで活躍できるから」「東京六大学でプレーしてみたい」「最高学府にチャレンジしたい」という思いが原動力です。
とはいえ、モチベーションだけでは伸びません。授業を大切にして「基礎」が身についているからです。基礎とは「教科書の太字部分を友達に説明できる力」。問題集が全部できるということではありません。教科書の太字部分とは公式、構文、重要知識。公式でしたら、①どんな場面で役に立つのか、②公式の導き方です。自分が覚えているではなく、教科書を見ながらでも①と②を友達に“説明できる”というところがポイントです。