40~50代になると始まる「感情の老化」

定年前は「老後はあれをしよう」「これをしよう」と決めていたのに、いざ時間ができると、どうしても腰が重くなってしまうもの。気が付けば、リタイア後にやりたいことをたくさんリストアップしたのに、いざリタイアしてから何年経っても、まだひとつも達成できていない……なんて人も決して少なくありません。

これが老いの怖いところで、どんなに体が元気であっても、意欲が衰えてしまえば体は動きません。どうして人は老いると意欲がなくなってしまうのでしょうか。

その原因は、感情の老化です。外部からの刺激に反応しづらくなるので、自分の心にワクワクした気持ちや「これをやりたい!」といった強い気持ちが起こりづらくなるのです。

なぜ、感情が老化するのかというと、脳にある前頭葉という部位に要因があります。

前頭葉は感情や創造性などを司る脳の部位で、唯一人間の脳だけで特別に発達した器官として知られています。ところが40〜50代になると、前頭葉の萎縮が徐々に始まってしまいます。中年になると、「若い頃よりもやる気がなくなった」「どこかに行きたいという気持ちがなくなった」という人が増えていくのは、前頭葉の萎縮が原因だと考えられています。

黒板に描かれた人間の脳のイラスト
写真=iStock.com/eli_asenova
※写真はイメージです

前頭葉を刺激して、活発化させる方法

ただ、前頭葉が萎縮すればその機能が必ずしも低下するかというと、そういうわけではありません。刺激を与え続ければ、機能低下を防ぐことはできるのです。

前頭葉を刺激するのに大切なのは、「やったことがないことにチャレンジすること」「ワクワクするような楽しいことをやること」という二つです。

食べたことのない食べ物を食べたり、行ったことのない場所へ行ったり、話したことがない人と話したり、やったことのないスポーツに挑戦したり。苦手なことであっても、初体験の高揚感から意外と楽しめることも多いです。すると、前頭葉が刺激を受けて活性化されます。

高齢者になったからこそ、「新しいこと」にどんどん挑戦してみてほしいと思います。