私の顔はゴミ

高校は猛勉強して、その地方で一番の進学校に行った。

「国立大進学者が多い県立高で、みんな他人に構わず勉強ばかりしている。いじめをする暇がないんですよ。ホントに鬼のように周囲が勉強しているんです。私も勉強のし過ぎで体調崩して3年間で15キロ痩せました。

スタイルはよくなったけれど、小中で『毛ガニ』と呼ばれた毛深さと、低い鼻、小さな目はそのまま。痩せて貧相になった分、『顔のゴミ』っぷり……いいところがひとつもない私の顔は、ゴミより価値がないんです。そのゴミっぷりが際立ち、鏡を見るたびに死にたくなった」

地方にいれば、ショッピングモールでかつてのいじめる側だった人たちに会ってしまう。だから東京の大学に進学することにした。

「入学金減免をしてもらえる中堅大学に進学しました。格安の寮に住みましたが東京はとにかくお金がかかる。同郷の先輩から『手っ取り早く稼ぐには、夜の仕事がいい』と言われましたが、私は容姿で落とされた」

ガールズバーの面接に行ったら、「整形してからおいで」と言われた。

「恋愛も就活も外見至上主義。中身が優秀でも『顔がゴミ』だと誰からも相手にされない。そこで、メイクの腕を磨くことにしました。メイクでかわいくなったら、恋人もできた。

でも今度はメイクを落とすことが無理になった。体の関係にすすめないから自然消滅する。そういうフェイクの自分を生きるのが嫌で、20歳のときに性産業でバイトをして、夏休みに目と鼻を整形したのです」

整形で得た自信

目はまぶたの「蒙古ひだ」と呼ばれる部分を取る手術を行った。これにより、目の横幅が広がって、立体的な顔立ちになった。鼻の穴を小さくする小鼻縮小の手術を行い、両方で100万円程度だったという。

「切って終わりかと思ったら、違うんですね。抜糸までに1週間以上かかりますし、それから1カ月くらいは局部が赤く腫れて怖かったです。化膿止めの抗生物質で胃が荒れました」

完全に術跡が消えるまでは、2カ月程度かかった。

「自分では見違えるほどきれいになったと思っても、大学では誰も気づかない。顔が変わると自信が出てきて、就活でも堂々と話せるようになりました。でもウチの大学のレベルでは、大手企業の就職はムリでしたね」

就職活動は熾烈しれつを極めているという。エントリーするには、企業説明会に行かねばならない。ある大手企業に勤務する男性(24歳)に話を聞いたことがある。彼は早稲田大学の政治経済学部を卒業している。

「僕が説明会申し込みサイトにアクセスすると、エントリーができるんです。しかしそれ以下のレベルに行っている友達には満席と表示される。友達だって“GMARCH(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政大学の頭文字)”ですよ」

企業サイドは、より優秀な学生を採用したがっている。それは容姿も同じだ。春香さんは「もっときれいなら、人気のIT企業にも入れたと思う」と、当時を振り返る。