給食中は教室の電気を消す中高生

都内の私立中高一貫共学校の教師は、「ウチの生徒はマスクを外したがらない。特に中学生は、熱中症の恐れがあるから屋外の体育ではマスクを外せと指導しているけれども、絶対に外さない」と頭を抱える。

この学校では、昼食時に正面を向いた黙食を推奨しているという。食事のときはマスクを外す。いつの頃からか、生徒が教室の電気を消すようになったという。

黒板
写真=iStock.com/Arthit_Longwilai
※写真はイメージです

「たぶん、食べているときの顔を見られるのが嫌なんでしょうね。どこのクラスでもそうしています。電気をつけると、消されてしまう。落ち着いて食べられないから消してほしいと言われ、電気をつけるとマスクをつけて弁当をしまう子がいるので、そうするしかない」

マスクへの依存度が高いのは、中学生の女子生徒が多いという。マスクを外した顔を友達に見られて、「そんな顔だったんだ。もっとかわいいかと思った」などと言われ、一時的に不登校になってしまった生徒もいるという。

また、自分の顔が醜いと思い込む「醜形恐怖症」と思われる生徒は多い。加えて、マスクを外したら友人との交流ができなくなるのではないかと不安になる「社交不安症」が疑われる生徒もいるという。

長引くマスク生活の弊害は、容姿を隠し続けることによるコンプレックスの肥大と、コミュニケーションに出始めている。

マスクを外す日のために、美容整形外科は今日も盛況

この学校では、感染対策を行う上で強制的にマスクを外す練習を行うことも考えているそうだ。当該の教師は、「外しても、そんなに悪いことも不快なことも起こらないという練習を行うことで、リハビリをしていく。生徒のマスク依存は、ウチの学校だけではない」と語っていた。

沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)
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また、マスクをしていれば、口が半開きであろうと、笑っていようと隠していられる。無防備な表情に慣れてしまい、「外したときの緊張感に耐えられない」と語る人もいるという。

マスクを外す日はいつかくるだろう。その日のために美容整形外科は今日も盛況なのだ。

春香さんは今日も美容整形について考えている。肉体的に痛みを覚えるほどに「キレイになりたい」と言いながらも、努力をしない女性への憎悪を募らせていく。

若く美しいことが“美”とされている。しかしそれは毎日目減りし続ける。

貯金が尽きるのが早いのか、若さという砂時計が落ちるのが早いのか、そのレースがどこまで続くのか。それは春香さんにもわからない。

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