「差別感情は隠されてガスが溜まる」

米国の調査会社、REPORTOCEANが2021年6月に発表したデータによると、美容医療市場は2021年から2027年の予測期間において、9.25%以上の健全な成長率が見込まれている。

矢野経済研究所『美容医療市場規模推移』を見ると、国内の美容医療市場は2014年から2017年の間に、114.88%の3252億円に拡大。美容医療に携わる医師に話を聞くと、男性や中学生、高校生まで裾野が広がっているという。

「今、小学生もインスタやTikTokをやって、自分の容姿について真剣に考えている。子供がいる人に話を聞くと、小学校からダイエットしているというし。ユーチューブの動画を見て、小学生が2週間で4キロ痩せるとか、みんな必死なんだなと。容姿が悪いと生き残れないからでしょう」

確かに、街で見かける子どもたちはみんなほっそりしている。あれはダイエットのたまものだったのか。

「容姿を気にするな、という教育をしているようですが、言えば言うほど、差別感情は隠されてガスが溜まる。蓋をし続けるといずれ爆発しますよ」

表面上は、誰もが平等な世界。しかし、マイナスとされる感情は、沼の底に潜っていく。

マスク生活による美意識の変化

コロナ禍の長引くマスク生活も美容医療市場規模の拡大に影響すると推測されている。

2年以上にわたり、顔の一部をマスクで覆い続ける生活を続けていると、「素顔を見られるのが嫌だ」と考える人も多い。

マスクを着用した女性
写真=iStock.com/klebercordeiro
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人は見えていない部分を、好意的に考えてしまう傾向があるという。「マスクイケメン」「マスク美人」などの言葉が日常的に語られるようになるのは、目の印象だけで全体像を美化しつつ想像しているからだろう。

それに、「容姿のコンプレックスは顔の下半身に集約される」とも言われている。例えば、鼻の穴、歯並び、唇の形、あごの形や向き、輪郭など。

また、加齢もコンプレックスになる。見た目の印象を左右する「ほうれい線」と呼ばれる小鼻から口の横にかけて刻まれるしわも『顔の下半身』にあるのだ。

マスクをしていれば、これらのコンプレックスを丸ごと隠すことができる。